ストーカー被害が全国で後を絶たない。被害者から相談を受けて警察が乗り出したものの悲劇を防ぐことができず、本人や家族が殺害されるというケースが目立つ。警察の信頼性低下にもつながりかねない深刻な事態である。

 大阪市平野区の路上で2日、スナック従業員の女性(38)が、客の男性(57)に刃物で刺され、死亡した。

 被害者の女性は大阪府警にストーカー被害を受けていることを相談。府警はストーカー規制法に基づいてストーカー行為をやめるよう加害者の男性に警告していた。

 「相談受理-警告」という手順を踏んだにもかかわらず、最悪の事態を防げなかったことになる。

 昨年1年間に全国の警察が把握したストーカー被害は2万1089件(前年比5・9

%増)で、2年連続で過去最多となった。加害者への警告は前年に比べ7・4%の増、禁止命令は49・3%も増えた。県内での相談件数は昨年1年間で155件。前年に比べ67件も増えている。

 元交際相手や配偶者が恋愛感情を抱いてストーカー行為を繰り返し、それが満たされなかった恨みから特定の相手につきまとったり、嫌がらせを繰り返すケースが多い。

 東京都三鷹市で昨年10月、女子高生が警視庁に被害を相談したその日に殺害されるという事件が起きた。群馬県では2月に、警察から警告を受けていた元交際相手の男性が女性を拳銃で射殺する事件も起きている。なぜ最悪の事態を防げないのか、検証が欠かせない。

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 三鷹市の事件直後、警察庁の米田壮長官は全国警察本部長会議で、対策の強化を求めた。被害を把握したそのときから万一の事態を想定して対応し、被害者と加害者が接触できない状況をつくり出すことに力を入れるという。

 沖縄県警は4月1日、刑事部や生活安全部にまたがるストーカー、ドメスティックバイオレンス(DV)に関する情報を集約し、迅速に対応するため、「子供・女性安全対策課」を新設した。

 被害者から相談を受けたとき、現状の危険度を適切に判断することが何よりも重要である。文書による警告を発したことで対策を取った気分になり、その後の丁寧なフォローをおろそかにしては、最悪の事態を防ぐのは難しい。

 一片の文書警告だけで加害者がストーカー行為をやめるようなことはない、という想定が必要なのではないか。加害者に対するカウンセリングも考慮すべきだろう。

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 被害者の女性にとって暴力におびえる日常は、深刻な人権侵害である。精神的な打撃は計り知れない。

 性質はストーカー行為と異なるが、DVも、暴力によって女性を脅し、従わせようとする犯罪行為である。配偶者暴力防止法(DV防止法)が改正され、配偶者だけでなく、生活の本拠を共にする交際相手からの暴力にも同法が適用されることになった。

 ストーカー行為であれDVであれ、被害に遭っている女性を孤立させない取り組みが大切だ。