琉球大学工学部の高良富夫教授(62)は、情報工学の音声言語処理の技術を活用し、しまくとぅばの音声合成システム(ソフト)の研究を進める。システムに入力するアクセントなどの基礎データを切り替えることで、多様な言語に対応できる汎用(はんよう)版システムへ発展させ、研究を重ねる。高良教授は「沖縄は、集落ごとに言葉があるという。将来的に、その研究に生かせれば」と話す。(社会部・内間健)

しまくとぅばの音声合成システムを開発し、汎用システムの研究を進める高良富夫琉球大学教授=西原町の琉大

 音声合成とは、コンピューターが人工的に「話す」こと。同システムは、ローマ字で発音記号を入力すると、ソフトが音やアクセントなどを解析し、人工的に発声する。

 例えば「昔々あるところに」を発音記号で「NkasiNkasi/arutukuruNkai」と入力すると、システムは「んかし、んかし、あるとぅくぅるんかい」と発声する。

 「学問知っち、物わからん」(学問は身につけたが、ものの道理を知らない)。沖縄のことわざを発音記号で入力すると「しめーしっち、むのーわからん」という音声になる。

 石垣市出身の高良教授は、東京工業大学大学院で音声合成や音声認識を研究した。1983年、琉球大学に赴任。「沖縄に帰ってきたら、沖縄らしい仕事をしよう」という思いから、しまくとぅばの音声合成の研究を始めた。

 標準語の音声合成システムを応用し、88年に首里言葉のシステムを開発した。2001年ごろまでには、故・山内盛彬さんが残したおもろ歌謡の楽譜や唱えを基に、古典琉球語の音声を人工合成する研究を進めた。90年代末には、アジアからの留学生が増え、同システムをベトナム語やミャンマー語へ応用する研究を支援した。それがしまくとぅばの汎用版開発への下敷きとなった。

 高良教授は研究の意義を「発声の仕組みを人工的に作り上げることで、言葉を科学的に分析、実証することができる」と説明。今後「沖縄各地の言葉の音声合成システムを作り、継承や学習に生かしたい」という。高校生や若い世代が入力を通し参加できる仕組みを作り上げ「科学的な視点から、若い世代が言葉に触れる機会をつくりたい」と話す。