出てこないかなあ。毎回、そう思いながら山道を運転する。いつ現れても轢(ひ)かないようにと、慎重にハンドルを握って1年。先日、ついに野生のヤンバルクイナと遭遇した

▼交通事故に遭った個体を山に返す取材の帰り道でのこと。直前、関係者に「北部の記者なのに、まだ見てないの」と、“不遇”を嘆かれただけに感激。数日後にも2羽を見かけた

▼どちらも小雨の降る日だ。土から這(は)い出すミミズなどを目当てに、雨の日はヤンバルクイナが元気に動きだす。天の恵みを喜ぶのは彼らに限らず、イモリやカエルたちもじっと気持ちよさげに雨粒に打たれている

▼日本大歳時記によると「立春から135日目、6月11日の入梅日から30日間」が梅雨。呼び名の由来は「梅の実が黄熟するころ降る」だが、歌に詠む季語は「五月雨」が主流で「梅雨」は明治以降に定着した

▼沖縄では、はるか以前に編まれた最古の古謡集「おもろさうし」で、座間味島の神歌(ウムイ)に「ちゆ(梅雨)」の文言が見える。南大東島の元気象台長・正木譲氏のエッセーに詳しいが、古琉球の人々がすでに使っていたと思うと面白い

▼本土の歳時記より一足早く、沖縄は5日に梅雨入りした。立夏とも重なり、すでに暑い夏の予感もするが、しばしの間、やんばるの生き物たちと雨音を楽しみたい。(儀間多美子)