「ブラック企業」を対象にした厚生労働省の調査で、長時間労働や残業代不払いなどの法令違反を指摘され、是正勧告を受けた県内の事業所は21に上ることが分かった。

 沖縄労働局が昨年9月、過去の労働相談内容や離職率の高さなどの情報をもとに対象を特定し、県内27事業所を抜き打ちで立ち入り調査した結果、判明した。

 ブラック企業に法的な定義はないが、一般的に過酷な働き方をさせて労働者を「使い捨て」にする企業を指す。全国的に社会問題化する中、違法な過重労働を強いる事業所が、県内にもまん延している実態が浮き彫りになった。

 調査した事業所のうち、労使で決めた残業時間の上限を超えて働かせるなどの労働基準法32条違反は、全体の約6割にあたる16事業所。サービス残業など残業代を支払わない同法37条違反は10事業所に上った。こうした違反事項別の違反率で、沖縄は全国平均を上回るという。

 県内では、失業率は改善傾向にあるものの、非正規労働者は約4割で、全国平均を上回る。「雇用の質」が問われている状況だ。

 必要最低限の生活を保つための収入がない人の割合を示す「絶対的貧困率」と、就業世帯のうち所得水準が最低生活費以下の世帯を示すワーキングプア率が、沖縄県はいずれも全国ワースト(2007年)との報告もある。

 経済的な窮状に付け入るかたちで、不当な労働環境が常態化していないか。沖縄労働局には、調査の継続と監督指導の強化を求めたい。

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 ブラック企業という言葉は2000年代半ば、IT企業に勤める若者がインターネット上で広めたのが始まりとされる。経済学が専門で労働問題にも詳しい森岡孝二関西大教授によると、08年のリーマン・ショック後、特に目立つようになった。社内で人を育てる余裕がなくなり、組織防衛に走る企業が増えた時期と重なる。

 労働相談を担うNPO法人「POSSE」(東京)の今野晴貴代表は、ブラック企業の特徴を「選別と使い捨て」と説明する。新卒を多数採用して選別し、不要と判断した社員は、ハラスメントで退職に追い込む。長時間の残業で心身を病ませて使い捨てる。「今や小売り、外食、介護、保育とさまざまな企業に広がっている」と言う。

 厚労省は「若者だけを対象にしたものではないが、過重労働を強いられるのは若者が多い」と分析している。

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 全国調査では、情報をもとに選んだ全国5111の企業や事業所全体の82%に当たる4189企業・事業所で、長時間労働や残業代不払いなどの法令違反があり、厚労省が是正勧告した。是正しない場合は、労働基準法違反容疑などで送検した上で社名を公表する方針という。

 是正勧告だけでは、抑止効果に疑問がぬぐえない。しかし、企業名の公表によって社会的信頼を失えば、企業にとっても打撃だ。これから就職する若者らに対しても、有効な情報提供になるだろう。実効性のある対応が急務だ。