米国防総省の元次官補代理で国家安全保障会議のメンバーでもあったモートン・ハルペリン氏は、沖縄返還交渉に深くかかわったことで知られている。

 8日、東京で沖縄タイムスのインタビューに応じたハルペリン氏は、米軍普天間飛行場の辺野古移設について「沖縄に新たな基地が必要とは思わない」との持論をあらためて強調した。

 米軍専用施設の約74%が今なお沖縄に集中している現状について「非常に驚いている」「もし基地に反対するならば、恐れずに言うべきだ」とも語っている。

 米政府の内部事情に詳しい専門家の率直な声だと受け止めたい。「米軍はいつでも新基地が必要だと主張する」というハルペリン氏の指摘は、沖縄返還交渉の当事者であっただけに説得力がある。

 ハルペリン氏に限らず、辺野古移設に異論を唱える米国の専門家は少なくない。

 マイク・モチヅキ氏やマイケル・オハンロン氏、パトリック・クローニン氏、ダニエル・スナイダー氏らはいずれも辺野古移設に何らかの形で疑問を呈し、現実的な立場から別の選択肢の検討を求めている。

 今、沖縄に求められているのはもう一度、原点に立ち返ることだろう。

 昨年1月28日付で安倍晋三首相や関係閣僚に要請した「建白書」と、仲井真弘多知事が昨年6月23日の慰霊の日に発表した「平和宣言」。この二つの公文書は民意を反映した歴史的文書であり、沖縄の原点といえる。

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 慰霊の日の県の平和宣言には、特別な重みがある。戦没者が眠る糸満市の平和祈念公園で、多くの遺族を前に、国内外にメッセージを発信するからだ。昨年の平和宣言で仲井真知事はこう語っている。

 「沖縄は、今もなお、米軍基地の過重な負担を強いられています。日米両政府に対して、一日も早い普天間飛行場の県外移設、そして、日米地位協定の抜本的な見直しなどを強く求めます」

 「私たちは、沖縄戦の教訓を継承するとともに、わが国が築いてきた平和主義の堅持を強く望むものであります」

 歴史体験に根ざした沖縄の原点とも言うべき内容だ。ほかでもない仲井真知事が、慰霊の日に、そう宣言したのである。まだ実現もしていないのに、これを一方的に放棄することは絶対にあってはならないし、許されないことである。知事は今年、どうするつもりなのだろうか。

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 建白書には、自民党を含む県議会のすべての会派代表、市町村長が署名・押印した。オスプレイの配備撤回とともに、ここにも、普天間飛行場の「県内移設断念」が盛り込まれている。二つの歴史的文書を簡単に放棄するようでは、これから先、何を言っても「ねらいはお金」だと見られ、信用されなくなるだろう。

 中国の海洋進出にどう対処するかという問題は、重要な外交・安全保障上の課題であるが、辺野古ありきの「ためにする議論」ではない、冷静な選択肢の検討が必要だ。