安倍政権が国連決議に基づく多国籍軍に対し、自衛隊の支援活動を拡大することを検討している。いわゆる「集団安全保障」と呼ばれる枠組みだ。集団的自衛権の行使容認に向けた動きと平行して進められているが、これも、やはり憲法解釈を変更して行おうとしている。戦後、日本が積み上げてきた海外で武力行使をしないという平和主義の証しを一内閣の判断でひっくり返そうとしている。到底認めるわけにはいかない。

 戦闘中の他国部隊に対し、燃料や水・食糧を補給したり、医療支援したりすることを可能とする内容である。

 今週にも公表される安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の報告書や、それを受けて出す「政府方針」に検討課題として提起する方針のようだ。

 これらの活動は、憲法9条が禁じる「他国の武力行使との一体化」に当たるとして制限されてきた。有事では戦闘行為と後方支援の線引きができないのは常識である。

 米英のアフガニスタン攻撃やイラク戦争で日本は特措法を制定。自衛隊の支援活動を「非戦闘地域」での給油や輸送に限定し、一線を越えることはしなかった。

 安保法制懇は、9条の「国際紛争」の定義を日本が当事者となる場合に限定する、と変更する考えのようだ。

 そうなると、日本が当事者とならない場合は、自衛隊の海外での活動が無制限に広がり、歯止めが利かなくなる。強引と言わざるを得ない。一人も殺さず、一人も殺されなかった戦後日本の平和主義が瓦解(がかい)することにつながる。

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 自衛隊の海外における活動で、政府は武器使用基準を緩和することも、自民、公明両党に検討を求めている。武器使用基準の緩和は安保法制懇の報告書を受けた政府方針に盛り込む方針だ。

 北アフリカのアルジェリアで昨年1月、プラント建設大手の従業員らがイスラム武装勢力に襲われ、日本人人質17人のうち10人が犠牲になった事件が背景にある。昨年11月成立の改正自衛隊法では、自衛隊による在外邦人の陸上輸送が可能になった。

 自衛隊の武器使用は現在、正当防衛と緊急避難に限られる。武器使用を前提とした邦人救出は認められていない。

 武器使用基準の緩和は邦人救出のための法整備を理由としているが、自衛隊の海外での武力行使に道を開く。重大な懸念が拭えない。

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 安倍首相は当初、96条の発議要件を緩めることで改憲に踏み出そうとした。「裏口入学」などと批判を浴びると、安保法制懇から報告を受け、閣議決定する方法に転換した。姑息(こそく)というほかない。

 安保法制懇は、同じ志向を持つメンバーを集めた首相の私的諮問機関にすぎない。その報告書を憲法解釈変更の根拠にするつもりなのだ。

 一内閣の閣議決定で解釈改憲をするのは暴挙というしかない。戦後日本の国の形を変える大転換である。平和主義のとりでの9条を形だけ残して、その意味を消し去るのは、法治国家の否定である。