米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画で、政府が来年に予定していた代替施設の本体工事の着工を、今秋に前倒しする方向で検討していることが分かった。

 安倍政権は、ことし1月の名護市長選直後から、設計や環境調査などの公告・契約を進めている。夏には海底のボーリング調査など控えているが、大幅に調査期間を短縮する方針だ。

 仲井真弘多知事から辺野古埋め立て申請の承認を得たことを“錦の御旗”に、国は着々と埋め立てに向けた手続きを進めている。だが、県内移設には県民の7割が依然反対している。「県外移設」の公約を破った仲井真知事の埋め立て承認については、いまだに県民が納得できる説明は果たされていない。問題は決着してはいないのである。

 移設反対を掲げて市長選で再選した稲嶺進名護市長は、市長の許可権限を使って移設を阻止する姿勢を示している。それに対し、国のやり方はあまりに強権的である。

 移設工事に伴い資材置き場として使う辺野古漁港の使用許可など市への申請をめぐっては、市との事前調整や連絡もなく一方的に回答期限を付けて提出した。名護市は、回答期限の法的根拠が不明であることや申請書の不備などを理由に再提出を求め、受理していない。

 移設反対の民意を無視し、地元合意も得ずに、新たな軍事基地を建設することが許されるのだろうか。安倍晋三首相の言う「自由や民主主義、人権を尊重する価値観」とも整合性が取れるはずもない。

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 国の方針は、11月に予定される県知事選をにらんだものである。仲井真知事が求めている「普天間の5年以内の運用停止」を早期着工によってアピールする狙いだ。

 「5年以内の運用停止」は、知事が昨年12月の沖縄政策協議会で国に要請した負担軽減策である。事実上、辺野古沿岸部の埋め立て承認に向けた条件とされる。だが、承認の根拠と同様、手続きの正当性はない。何をもって「普天間の運用停止」とするのか、その定義も曖昧である。在日米海兵隊のトップは「新しい施設ができるまで動くことはない」と否定している。

 承認前は県外移設を堅持していた知事の発言は、明らかに変化している。3月の県議会では辺野古移設に関し「(普天間に比べ)辺野古の場合は、誰がみても危険度はぐーんと減っていると思うのではないか」と言ってのけた。

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 4月の日米首脳会談で安倍首相は「5年以内の運用停止」をオバマ大統領に伝えた。しかし、米側の受け止め方は「国内事情の説明」にすぎない。共同声明では「普天間飛行場のキャンプ・シュワブへの早期移設および沖縄の基地の統合は、長期的に持続可能な米軍のプレゼンスを確かなものとする」と、新たな基地を半永久的な軍事拠点と位置づけている。

 環境省の有識者会議は、辺野古沖などを生物学や生態学の観点から「重要海域」と選定した。この貴重な海を埋め立てることが、次代に誇れる選択肢とはとても言えない。