尖閣諸島を抱える沖縄側から、南シナ海の不穏な情勢を見ていると、いやでも中国の強引さが目につく。

 当然、中国にも言い分はあるだろうが、領有権争いのある海域で、自国の主張を一方的に力で押し通そうとする試みは、21世紀の国際社会のルールになじまない。

 中国は5月2日から、南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島付近の海域に、大規模な石油掘削設備を搬入し始めた。掘削設備を警護するため軍艦7隻を含む約80隻の公船を出したという。

 西沙諸島について中国は「わが国の領土」だと主張するが、ベトナムは自国の排他的経済水域だと真っ向から反論している。

 ベトナム政府は沿岸警備隊の艦船などを現場海域に派遣した。2日から7日にかけて中国船とベトナム艦船の衝突が複数回発生し、負傷者がでたという。

 「わが国の領土」だから石油の掘削をするのは何も問題ないと中国側は強調する。だが、ベトナムが排他的経済水域だと主張していることを考えれば、少なくとも一方的な行動は慎むべきである。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)は11日、ミャンマーの首都ネピドーで首脳会議を開き、全当事者に「自制と武力不使用」を求める首脳宣言を採択した。ASEAN諸国が結束して中国をけん制したのは、南シナ海情勢に対する「深刻な懸念」(外相会議声明)の表れである。

 ASEANから噴き出した危機感を中国は謙虚に受け止めてもらいたい。

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 1952年に発効したサンフランシスコ講和条約は、東シナ海から南シナ海に点在する尖閣、西沙、南沙(スプラトリー)諸島などの戦後の帰属については明文化していない。この海域で領有権争いが絶えないのは、講和条約できちんと処理しなかったからである。

 中国は、同国南部の海南島からインドネシアの北岸に延びるU字型の海域を自国の境界線と定めている。その面積は南シナ海のおよそ6割。フィリピンなどは中国の主張に対し、「合理的な根拠がない」と反発。最近、米国も境界線の法的な位置づけを明確にするよう求めている。

 フィリピンは2013年1月、国際海洋法条約に基づいて仲裁手続きを進めたが、中国は提訴に応じていない。

 フィリピンが米国との間で新たな軍事協定を結び、米軍によるフィリピン軍施設の使用を認めたのは、中国をけん制するためである。

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 ASEANと中国は02年に「南シナ海に関する行動宣言」に署名した。しかし、宣言には実効性がなく、今回のような衝突に対応できない。

 宣言の実効性を高めるためには、拘束力を備えた具体的な行動規範づくりが必要だ。 南シナ海の領有権問題をどのように着地させるか。尖閣をめぐる日中対立をどのような形で収めるか。そのことが21世紀アジアの行く末を大きく左右するのは間違いない。

 軍拡競争と相互不信によって緊張を高めるようなことがあってはならない。