ウクライナ情勢が混迷し、国家分断の危機に陥っている。ロシアと国境を接するウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両州で親ロシア派組織が住民投票を強行し、「国家としての自立」を求める声が圧倒的多数で支持された。

 これに対しウクライナのトゥルチノフ大統領代行は「法的な有効性はない」といい、欧米諸国、日本も一様に否定している。一方で、親ロシア派の後ろ盾であるロシアの大統領府は結果を尊重する声明を発表した。ウクライナ政権を支持する欧米諸国はクリミア編入をめぐり、ロシアに対し、経済制裁を強めているが、これで双方の緊張感がさらに強まる恐れが出てきた。

 住民投票の結果は、ドネツク州では親ロシア派組織「ドネツク人民共和国」の選管当局によると、89・7%が賛成、約10%が反対、投票率は約75%。ルガンスク州では同じく「ルガンスク人民共和国」の選管当局は約96%が賛成、3・8%が反対、投票率は約75%だったと主張した。

 両「共和国」は両州の行政庁舎を占拠しており、そんな異常な中で住民投票が行われたのを忘れてはならない。

 住民投票についてはさまざまな疑義が出ている。そもそもクリミアの住民投票の際も同様だったが、ウクライナの憲法では、いかなる領土の変更もウクライナ全体の国民投票で決めなければならないと規定されている。

 住民投票で問われた「国家としての自立」についても、ドネツク州では「自決権」の確立を問う意味で独立の是非は今後決めるとされ、ルガンスク州は「ウクライナからの独立」を意味すると、受け止められ方は一致していない。

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 さらに問題なのは住民投票が公正に行われたとはとてもいえないことである。国外メディアは数人の住民が2回投票する現場を目撃したと報じた。米大統領報道官も重複投票や投票前にすでに印がつけられた投票用紙があったと指摘。選挙権は18歳以上だが子どもが投票したとの情報や結果発表が開票終了前に行われたと住民投票の正当性に重大な疑問を呈した。

 ウクライナ情勢は危機感が増すばかりである。現状のままでは、政権と親ロシア派との間で分裂し、内戦状態を引き起こしかねない。

 今月25日には大統領選挙が行われる。先の2州は大統領選には参加しないと表明しているが、混迷に終止符を打つべく、ロシアは介入をやめ、説得を強めるべきだ。

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 大統領選の前には欧州安保協力機構(OSCE)が提案した「円卓会議」が開催される予定だ。各地域の全政治勢力の代表、市民、学識経験者らが参加する。打開の糸口となる対話にしなければならない。だが、ウクライナ政権は親ロ派武装集団を「テロリスト」と呼び、対話することを拒否しており、開催にこぎ着けるかどうかは不透明だ。

 ウクライナの危機は、ロシアによるクリミアの編入がきっかけだ。これ以上ウクライナが泥沼化することがあってはならない。ロシアは自身の振る舞いを省み、国際秩序の中に戻るべきだ。