米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向け、日を追うごとに防衛省の強硬姿勢が目立ってきた。まるで牙をむいて襲いかかっているかのようだ。

 沖縄返還交渉に関わった元米国防次官補代理のモートン・ハルペリン氏は「民主主義の社会では、市民の要望と軍事的な必要性を考慮してバランスを取り、両者の欲求を満たす必要がある」と指摘しているが、安倍政権にはその感覚が全く感じられない。

 稲嶺進名護市長は15日から訪米し、窮状を訴える。この倒錯した状況はいったい何なのか。

 1994年、宝珠山昇・防衛施設庁長官(当時)は那覇で記者会見し、こう述べた。「沖縄は基地と共生、共存する方向に変化してほしい」

 安倍晋三首相の外交・安保政策のブレーンである元駐タイ大使の岡崎久彦氏は雑誌の対談で発言している。「沖縄も日本という船の一員。エンジンルームに近く、うるさくて不公平だといっているが、それに対する十分な代償をもらえばいい」(「ボイス」96年2月号)。

 自民党の額賀福志郎元財務相は防衛庁長官時代に「従来は沖縄の意向を確認し、それを反映した施策を推進したが、この手法はとらない」と、防衛庁幹部に述べたという。

 事態は3人の発言通りに進んでいると言っていい。

 復帰の際、米国は施政権を返還する代償として「基地の自由使用」という果実を手に入れた。今、進行しつつあるのは、普天間の県内移設を前提にした米軍基地の拠点集約化と日米の軍事一体化である。

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 県は、環境保全指針で辺野古沿岸域を「自然環境の厳正な保護を図る区域」であるランク1に評価している。

 生物多様性基本法に基づき2013年に策定した「生物多様性おきなわ戦略」で、県は北部圏域の将来像に「ジュゴンとその生息環境が保全され、ジュゴンの泳ぐ姿が見られる」と盛り込んだ。

 だが、仲井真弘多知事が埋め立てを承認したことで基地建設が優先されれば、環境保全政策との整合性は取れるはずもない。

 昨年8月、宜野座村のキャンプ・ハンセンに米軍のHH60救難ヘリが墜落した事故では、県や村の立ち入りが認められたのは事故から7カ月後だった。沖縄は安保・地位協定が優先され、憲法にうたわれた地方自治も住民の平和的生存権も大きな制約を受けている。これが復帰42年を迎えた沖縄の現実だ。

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 安倍首相は15日、自身が設置した有識者懇談会から集団的自衛権の行使容認を盛り込んだ報告書を受け、政府の見解を表明する予定である。

 憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認は日本の安保政策の一大転換となり、東アジアに一層の緊張をもたらす恐れがある。

 沖縄を再び戦場にしてはならない。中国と再び戦火を交えてはならない。これがすべてに優先する課題である。

 辺野古移設計画をいったん凍結し、日中の関係改善に向けた取り組みと移設計画の見直しを同時に進めるべきだ。