270人以上の女子生徒が学校に押し入った武装集団によって連れ去られる、という卑劣な事件が、ナイジェリア北東部で発生してから1カ月が経過した。拉致された生徒たちの行方は、いまだ不明のままだ。

 イスラム過激派「ボコ・ハラム」の指導者が関与を認め、「女は奴隷だ」として生徒たちを売り飛ばす考えを示した。断じて許されない犯罪であり、一刻も早い解放を望みたい。

 「ボコ・ハラム」とは、地元の言葉で「西洋の教育は罪」を意味するという。西欧式の教育を否定し、学校をその象徴と見なして襲撃を繰り返している。

 今回拉致された女子生徒たちは16~18歳。日本なら高校生に当たる年齢だ。安全であるべき学校施設にいるところを突然襲撃され、今なお、危険にさらされ続ける少女たちを思うと胸が痛む。

 事件は国際社会に衝撃を与えた。国連安全保障理事会は「深い憤りを表明し、最も強い言葉で非難する」との報道表明を発表した。日本も事件を非難し、女子生徒の解放を求める外務大臣談話を出した。

 ミシェル・オバマ米大統領夫人ら影響力の高い著名人らも声を上げ、インターネットでは「少女を帰せ」との訴えが広がりを見せている。

 ボコ・ハラムは、生徒解放の条件として、拘束されているすべての戦闘兵の釈放を要求した。これに対し同国のジョナサン大統領は釈放に応じないことを明らかにした。事態は膠着(こうちゃく)しているようにも見えるが、国際社会の声を解決につなげてもらいたい。

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 教育を受けるという、私たちにとっては当たり前に見える権利が、世界を見渡せば十分に保障されていない。ユネスコによると、性差別や貧困、戦争などで学校に通えない子どもは全世界で約5700万人に上る。

 ナイジェリアの学校を紹介した外務省の子ども向けホームページでも、家の手伝いなどで学校へ通えない子どもたちも多い、と伝えている。その中で学びに意欲をもった少女たちが襲われた。

 パキスタンでは2012年、女子教育の必要性を訴えたマララ・ユスフザイさん(16)が、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」の銃撃を受け、重傷を負った。

 現在は英国で学ぶマララさんは、拉致された少女たちに強い思いを寄せ、国際社会に救出を訴える運動を進めている。その思いを共有したい。

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 ボコ・ハラムに襲撃されたのは、少女たちだけにとどまらない。米高官は、ボコ・ハラムがことしに入り千人以上殺害したと言明した。

 ナイジェリアは石油資源が豊富で、国内総生産(GDP)はアフリカ最大だ。だが、貧富の差が大きく、経済的困窮への不満が高まっている。加えて欧米の価値観の押しつけへの反発が事件の背景にあるという。

 米英などが救出に向けて動いているが、こうした事件の温床にも目を向け、改善に協力すべきだ。