【久高泰子通信員】京都大学の人間・環境学研究科教授で沖縄の祭祀(さいし)世界など民俗学も手掛ける伊從(いより)勉さんが3月27日、パリ日本文化会館で「国民文化の多様性…琉球・沖縄観にみるナショナリズムの影」と題して講演した。

国民主義をテーマにした円卓会議で琉球・沖縄観について講演する伊従勉さん(中央)=パリ日本文化会館

 講演は円卓会議「日仏のナショナリズム」の一環。

 伊從さんは「琉球は古代日本の古物博物館である」とした沖縄学の父伊波普猷の主張を取り上げ、琉球・沖縄に日本の古代を見ようとする潜伏したナショナリズムの表明と紹介。同時に、日本中央からみた周縁に日本文化の古代的な側面が残存する「周圏論」として現在も研究者が支持しているとした。

 また「周圏論」に対し、琉球の歴史に文明発展上の遅延性を認め、それを琉球史の特徴とする「琉球遅滞史観」や、東アジア全域に交易活動を展開した国際通商国側面を強調する「琉球視点的史観」なども紹介した。

 伊從さんは琉球の祭祀や首里城など沖縄の文化、歴史に詳しく、「琉球祭祀空間の研究」で2005年、第32回伊波普猷賞を受賞している。

 会議ではほか、「今日の社会における国民主義の台頭」や「国民感情と国家遺産の保護」「国民主義と祖国愛について」などを演題に研究者が論議。

 国民主義は社会に危機がある時に台頭し、スイスやノルウェーなど安定した国家には見られない現象という報告があった。