「まともに対処できなかった最終責任は大統領である私にある」。韓国の朴槿恵大統領は19日、国民向けに談話を発表し、政府の不手際を認め謝罪した。

 救助活動に「失敗した」とされる海洋警察庁を解体し、新たな組織を立ち上げることや、民官癒着を断ち切るなど、安全に絡む社会の仕組みを根本から立て直すという。

 300人を超える死者・行方不明者を出した旅客船セウォル号沈没事故。修学旅行の高校生らを乗せた巨大な船体が横転し、何隻もの小型船が救助のため現場に駆けつけたが、潮の流れが速いこともあって救助活動は一向にはかどらず、多くの乗客を乗せたまま沈んでいく船体…。

 事故発生から16日で1カ月が過ぎた。日を追うごとに明らかになったのは、乗組員や船会社、政府組織の管理体制のずさんさと、職業倫理を欠いた無責任な対応だった。

 乗客を置き去りにしてまっ先に船から逃げた船長。乗客らを退避させる措置をとらなかった乗組員。基準を大幅に上回る貨物を積み、コンテナの固定も不十分だったことを黙認した1等航海士。赤字を避けるため日ごろから過積載を放置し続けてきた船会社。 セウォル号に搭載されていた救命ボートはほとんどが作動しなかったという。

 なぜ若い命を救えなかったのか。韓国社会全体が、この重い問いかけに直面している。とりわけ朴政権への風当たりは厳しい。不明者の家族からは、救助活動を継続している段階で海洋警察庁の解体を打ち出したことに強い反発が出ている。

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 不明者の捜索活動が続き、事故原因の究明も完全に終わったわけではない現時点で、早々と組織の解体を打ち出すのは、確かに先走りの印象がぬぐえない。

 6月4日には、統一地方選を控えている。急落する支持率を挽回するための「選挙目当ての談話」との指摘を受けるのは避けられないだろう。

 朴政権にとって不運だったのは、救助活動の真っ最中に地下鉄事故が発生し、鉄道・船舶などの輸送手段の安全性に深刻な疑問符がついたことである。

 成長重視の急速な近代化によって韓国社会は表向き華やかになったが、目に見えない所に大きな空洞やひずみが生じているのかもしれない。

 日本の海上保安庁は事故当日、韓国の海洋警察庁に救助活動の支援を申し出たが、韓国からの支援要請はなかった。これに対しても国民の中から、なぜ支援を断ったのか、との批判が上がった。

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 地震などの自然災害や大規模な海難事故、共通の環境問題などに対して、日本、韓国、中国の隣国同士がお互いに人を出し、知恵を出し、物資を融通しあって協力し合うような関係を築くことはできないだろうか。

 同盟関係にある国だけに頼るのは発想が狭すぎる。人道第一の協力関係を拡大することが、国同士の関係改善にもつながるはずである。

 東日本大震災がそうであったように、「共感」「共苦」の感情は国境を超える。