果たして、基地周辺の住民を苦しめている航空機の騒音被害が、これで解消される判決といえるのであろうか。

 米軍と海上自衛隊が共同使用する厚木基地(神奈川県)の騒音被害をめぐり、周辺住民約7千人が国に夜間・早朝の飛行差し止めなどを求めた第4次厚木基地騒音訴訟で、横浜地裁の佐村浩之裁判長は、自衛隊機の夜間・早朝の飛行差し止めを命じる全国で初めての判決を言い渡した。

 一方で米軍機への飛行差し止め請求は退けた。

 損害賠償も基地騒音訴訟では過去最高となる約70億円の支払いを命じた。

 判決は、住民の睡眠妨害などが「健康被害に直接結びつく相当深刻な被害」と認定するとともに、自衛隊が夜間・早朝の飛行を既に自主規制していることから自衛隊機の差し止めで「基地の公共性、公営上の必要性が大きく損なわれることはない」とした。

 原告団は判決に対し「100パーセントではないが一歩踏み出した判決」と喜びの声を上げた。一定の前進ではあろう。

 しかし、騒音の最大の原因である米軍機の飛行差し止めが認められなかったことで、実質的な騒音軽減策は置き去りにされた。

 判決でも触れているように「午後10時から午前6時までの時間帯の騒音は大半が米軍機によると認められる」としているからだ。

 つまり、自衛隊機の差し止めによっても、夜間・早朝の騒音は何ら変わらないということである。

    ■    ■

 厚木基地は、横須賀に配備されている原子力空母ジョージ・ワシントンの艦載機部隊と海上自衛隊の哨戒機などが駐留する。

 米軍機の夜間離着陸訓練(NLP)が実施されるなど、基地がある大和市、綾瀬市などのほか広範囲にわたって騒音被害を及ぼしている。

 自衛隊機に比べ、はるかに住民への負担が大きい米軍機について判決は「支配の及ばない第三者の行為の差し止めを国に求めるもので、棄却を免れない」と、いわゆる「第三者行為論」によって請求を退けた。

 原告団はもとより米軍基地が集中する沖縄にとっても、納得できるものではない。判決によって、あらためて司法が判断を避ける米軍の“不可侵”性が浮かび上がった。

    ■    ■

 県内では夜間・早朝の飛行差し止めなどを求め、嘉手納で第3次、普天間で第2次の訴訟が、周辺住民らが原告となって進められている。

 これまでの判決では過去の被害に対する損害賠償のみを認めている。肝心の米軍機の飛行差し止めなどは、「第三者行為論」によって退けられている。

 だがこれは、最高法規の憲法よりも、日米安保体制を上位に置く思考停止した論理である。人権のとりでである司法の役割を自ら放棄した判決と言わざるを得ない。

 自衛隊機によって健康被害が生じれば飛行を差し止め、米軍機に対しては差し止めないというのであれば、日本は米国の「属国」というほかない。