八重山地区の教科書採択問題で県教育委員会は21日、竹富町教育委員会を八重山採択地区から分離し、町単独の採択地区に変更することを決めた。

 竹富町教委の要望に沿ったもので、県教委の判断を評価したい。

 ふに落ちないのは文部科学省の対応だ。翌22日、経緯説明に訪れた諸見里明県教育長に対し、前川喜平初等中等教育局長は「県教委の決定は、法律の定める共同採択制度の趣旨に即しておらず遺憾だ」と述べた。

 県教委の宮城奈々委員長は竹富町教委の分離決定に際し「長い間、膠着(こうちゃく)状態にあった教科書採択に係る混乱は終息に向かうと思われる」とのコメントを発表した。

 菅義偉官房長官も21日の定例会見で、教科書採択地区を決める権限は県教委にあるとして「国が口を挟むことではない」と明言したばかりだ。

 国の介入による教科書問題の混乱は「終息」に向かわせるべきだ。これ以上問題をひきずり、教育現場に影響を及ぼすのは許されない。

 八重山教科書問題は、そもそもなぜ起きたのか。

 2012年度の中学校公民教科書の選定をめぐり石垣、竹富、与那国の教育長らで構成する「八重山採択地区協議会」の玉津博克会長(石垣市教育長)が、これまでの選定ルールを突然変えたのが発端だ。選定ルールの変更は、保守色の強い育鵬社版の教科書の使用を決めるのが目的だった。これに反発した竹富町が結果的に、文科省から是正要求を出された。

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 国の不当介入が、八重山教科書問題をいびつに発展させてきたのは論をまたない。

 だが、足元の「ゆがみ」にも目を向ける必要があるのではないか。

 教科書採択をめぐっては、与那国町の教育長も石垣市に同調している。なぜこうしたことが八重山で起きたのか。

 玉津教育長は20日、県教委が竹富町を単独採択地区化する方針を示していることを受けて上京。文科省の上野通子政務官との面会後、自民党文科部会にも出席し、県教委の姿勢を批判した。

 玉津教育長はこの際、記者団に「八重山は教育も行政も経済も一体だ。教科書だけ別というのは理解できない」と述べている。

 竹富町の分離を余儀なくしたのは玉津氏ではないか。その張本人が、「八重山の一体化」を強調するのは皮肉に響く。とはいえ、玉津氏の指摘に一理あるのも事実だ。

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 八重山の3市町は、2000年代に合併を模索した。竹富町の役場は石垣島にある。3市町長は政治的な立場の違いを超え、観光などの分野で協調してきた。今回の竹富町の分離で、八重山社会全体に亀裂が波及する事態は避けなければならない。

 尖閣諸島に近い八重山住民には中国への警戒も強まっている。が、政府の国防政策が地域の利害にどう絡むのか冷静に見極める必要がある。地域の歴史から学ぶ視点を大切にしなければならない。地域住民が主体的に島の未来を論じる環境を取り戻すべきだ。