絵本「かぜのでんわ」(作・絵いもとようこ、金の星社)は山の上に置かれた1台の電話をめぐる物語。電話線はつながっていないが、会えなくなった人に自分の思いを伝えると届くという

▼たぬきの坊やがおにいちゃんに「はやくかえってきてよ」と呼び、うさぎのお母さんが「いつものように『ただいまー』ってかえってきて」と語る。「おれとこどもたちをのこしていっちゃうなんて…」と泣くのはきつねのお父さん

▼絵本は、東日本大震災で多くの命が失われた岩手県大槌町の高台に置かれた「風の電話ボックス」の実話を基につくられた

▼自宅の庭にボックスを置いたのは大槌町の佐々木格さん。電話線がつながっていない黒電話の横には「風の電話は心で話します」と書かれている。震災の遺族らが訪れ、亡くなった家族らに語りかけているという。心の復興になればと佐々木さんは思っている

▼沖縄戦の体験者や遺族にとっての「風の電話」は、犠牲者の名が刻まれた「平和の礎」や慰霊碑になるだろう。慰霊祭で花を手向け、名を呼び、心をつなげる

▼県関係の多くが犠牲になったサイパンやテニアンの地上戦から70年。南洋群島帰還者会は25日、墓参のために現地へ向かう。頬を伝う涙や悲しみが亡くなった人々が生きていた証しであり、今につなぐ絆になっている。(与那原良彦)