領有権問題を抱える東シナ海と南シナ海で、力を背景にした一触即発の「権力政治」(パワー・ポリティックス)がうごめいている。

 東シナ海の公海上空で24日、中国軍のSU27戦闘機2機が自衛隊機2機に相次いで異常接近した。防衛省の発表によると、中国機は海上自衛隊の画像情報収集機OP3Cに約50メートル、航空自衛隊の電子測定機YS11EBに約30メートルまで近づいたという。

 小野寺五典防衛相が「常軌を逸した近接行動だ」と批判すると、中国国防省はすかさず談話を発表し、反論した。「自衛隊機が中ロの合同軍事演習空域に勝手に侵入し、危険な行動をとった」というのが中国側の言い分だ。

 米国を引き込むことに躍起な安倍政権と、ロシアに急接近する中国の習政権。自衛隊機が中国とロシア海軍の合同軍事演習を監視していたのは事実である。

 2001年に南シナ海上空で米軍のEP3電子偵察機と中国軍の戦闘機が接触し、中国軍機が墜落するという事故が起きた。仮に今回、接触事故が起き、どちらかの軍用機が墜落していたらどうなっていたか。

 そのことを想像してみることが大切だ。おそらく01年とは比較にならないような深刻な事態が発生し、両国に排他的なナショナリズムが吹き荒れたであろう。

 日中関係は政府同士も国民意識の上でも戦後最悪の状態である。国際世論を意識して非難の応酬に終始するだけではなく、政府と民間(非政府組織)、二つのレベルの具体的取り組みが急務だ。

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 自衛隊関係者や研究者ら専門家が共通に指摘するのは、不即の事態に備えるための危機管理の仕組みづくりである。それさえつくれないような、対話の努力を欠いた政権に東アジア外交をまかせるべきではない。

 もう一つ日中両国が共通に取り組まなければならないのは、排他的なナショナリズムにどのように対処していくか、という難題である。

 日本国内のネットや雑誌メディアには、中国に対する罵詈(ばり)雑言が氾濫している。中国でも、「勿忘国恥」(国恥を忘れることなかれ)という歴史教育、愛国主義教育が盛んだ。

 中国に対する対抗意識を鮮明にし靖国参拝を強行した安倍晋三首相の政治姿勢が中国の若者の感情を逆なでし、南シナ海の西沙(パラセル)諸島などをめぐる中国の強引なやり方が日本人の中国イメージをますます悪くしている。泥沼の悪循環だ。

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 領有権をめぐる問題は主権が絡むだけに人々の感情をかき立てやすい。相手国に対するマイナス・イメージが固定化すると、事実でない部分が独り歩きし、相互理解を妨げる。

 日中対立の影響をもろに受けるのは沖縄である。沖縄を中国包囲網形成のための軍事要塞(ようさい)にしてはならない。

 古琉球から現在に至る沖縄独自の歴史経験を踏まえて沖縄の未来像を構想すべきである。具体的には「平和のかけ橋」に徹することだ。