こんな権限しか与えられていない機関ではとても監視することはできない。形ばかりの設置というほかない。

 自民、公明両党は特定秘密保護法の運用が恣意(しい)的にならないよう監視するとうたう「情報監視審査会」を衆参両院に設置する与党案をまとめた。常設機関とし、今週にも国会法改正案を衆院に提出する構えだが、この審査会が国会による監視機関となるのかどうか、はなはだ疑問だ。

 審査会は政府から毎年、特定秘密の指定や解除などの運用状況の報告を受け、指定が不適切だと判断すれば、解除などを勧告することができる。また秘密の提供を政府が拒んだ場合は、提出するよう勧告することができる。

 問題はいずれの場合も勧告に強制力がないことである。政府が特定秘密保護法に基づき「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」を盾にすれば、何でも拒否することができるのである。内部告発者に対する保護も明記されていない。

 これでは、審査会に監視という名前を冠しただけで、実際にチェック機能を果たすことはとうていできない。

 審査会をそれぞれ議員8人で構成することも疑問だ。各会派の議員数に応じて割り振ることになり、審査会は1強の自民党が仕切ることになるのは間違いないからだ。

 審査会が各省庁の膨大な特定秘密をどう選択し、提出を求めることができるかどうかも心もとない。

 結局、政府主導で運用が進むのは、目に見えている。

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 特定秘密保護法は昨年12月、安倍政権がなりふり構わず、数の力で強行採決を繰り返して成立した。

 世論の反発が高まったため、安倍政権は採決直前になって泥縄式に政府内に秘密指定が妥当かどうかを担わせる機関の設置を打ち出した。

 内閣官房に「保全監視委員会」、内閣府には「独立公文書管理監」と「情報保全監察室」を置く。さらに有識者らでつくる「情報保全諮問会議」もある。だが、諮問会議は「特定秘密指定の基準」を決めるのが役割だが、1月に開かれただけだ。残りの三つの機関は、秘密指定と、指定が妥当かどうかを身内同士で検討するのと同じで、検証の意味は持たない。「第三者機関」とは呼べないのである。

 独立性を持った第三者機関となる可能性を持っていたのが今回の審査会だったが、与党案は、政府の暴走の隠れみのになるだけである。

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 特定秘密保護法は、政府によって恣意的に秘密指定され、国民の知る権利、取材や報道の自由が侵害される懸念が強い。

 三権分立の下では、政府をチェックするのは国権の最高機関で、国民の代表である国会の務めである。審査会が強制力を持たないのであれば、政府に歯止めをかけることができず、権力分立を危機に陥れてしまうものだ。

 与党案は国会に与えられた重要な役割を国会議員自ら放棄しているといっていい。実効性に重大な疑問が多い審査会によって、12月に法を施行することは許されない。