返還される米軍用地の跡地が一大医療拠点として生まれ変わる可能性が出てきた。

 来年3月に返還されるキャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区(宜野湾市)である。

 築30年を迎え、老朽化が激しく建て替えを計画していた琉球大医学部付属病院(西原町)が医学部を含め、同跡地に移転する計画を進めていることがわかった。

 同跡地には体にメスを入れずにがんを治療、副作用も少ないとされる「重粒子線治療施設」の導入を、県医師会などが仲井真弘多知事に提言している。

 仲井真知事も前向きの姿勢を示しており、医療拠点としてさらに厚みを増すことになりそうだ。

 宜野湾市が示している跡地利用案では、返還総面積約51ヘクタールのうち、19~20ヘクタールを「国際医療拠点ゾーン」と位置付けている。琉大付属病院と医学部が移転することになれば、地元に与えるインパクトは大きい。

 大城肇琉球大学長と佐喜真淳宜野湾市長が29日に仲井真知事を訪ね、琉球大が医療拠点に参画することを伝える。これを受け、知事は6月初めにも上京し、総額で約1千億円に上るとみられる費用の財政的な支援を政府に求めることにしている。

 跡地利用をめぐっては市、市軍用地等地主会、県、沖縄防衛局、沖縄総合事務局の5者が協議会をつくって返還に向けた段取りを進めている。個別の返還予定地の跡地利用をめぐり協議会を設置するのは初めてである。

 返還時期が10カ月後に迫る中で、約660人に上る地権者の合意形成を図ることができるかが課題だ。

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 西普天間住宅地区は2013年4月に日米両政府が合意した嘉手納基地より南の基地の返還の一つである。

 同地区はことし1月に、駐留軍用地跡地利用推進特別措置法(跡地法)に基づき、開発の重点地域として政府が積極的に支援する「拠点返還地」に指定された。政府は今後の返還跡地利用の「モデル地区」にしたい考えだ。

 政府内には、日米が協力して新薬を開発する「沖縄メディカル・イノベーション・センター」(OMIC)を創設し、沖縄科学技術大学院大学(OIST)との連携を構想する動きもあるようだ。

 OMICは、米軍が持つ治療データの活用を前提にしている。だが、なぜ米軍のデータでなければならないのか。疑問点が多く、どう沖縄振興につながるのかも不明だ。説明を求めたい。

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 西普天間住宅地区には約150棟の建物がある。ほとんどの建物にアスベスト(石綿)が使われている可能性が高い。解体する作業員と周辺住民への安全対策を万全にしなければならない。

 土壌汚染や水質汚濁、廃棄物の有無も調査する。返還軍用地からはこれまで、さまざまな有害物質が確認され、跡地利用を困難にしてきたことは珍しくない。

 原状回復をした上で跡地利用にスムーズに移行させるのは、米軍に基地を提供してきた国の責務である。