安倍晋三首相が集団的自衛権の行使容認へ向け憲法解釈変更の基本的方向性を会見で示してから、初の本格的な国会論戦が行われた。

 28日の衆院予算委員会と29日の参院外交防衛委員会。2日間の集中審議における安倍首相の答弁からは、集団的自衛権の行使容認がなぜ今必要なのか、納得できる説明は得られなかった。それどころか、行使要件の曖昧さと、自衛隊活動がなし崩し的に広がりかねない懸念ばかりが浮き彫りになった。

 例えば、首相は先の会見で、行使が必要な事例として、近隣有事の際に邦人を輸送する米艦防護を挙げた。これを受けた委員会審議では、「日本人が乗っているから守るが、日本人が乗っていないから駄目だということはあり得ない」と答弁し、邦人が乗っていない米艦についても防護対象にする考えを示した。つまり邦人輸送の有無は関係ないことになる。

 会見の際、首相は子どもを連れた母親が米艦に救助されるイメージ図を指し、「このままでは子どもたちやお母さんを守れない」と情に訴えていたが、全くの茶番だ。

 また、邦人を乗せた米国以外の艦船についても「一言も米国以外の船は駄目だと言っていない」と防護の対象とすると述べた。

 さらに輸入原油の多くが通過する中東のホルムズ海峡を念頭に、シーレーン(海上交通路)に機雷が敷設された場合の除去についても参加の必要性を訴えた。

 検討対象の事例が膨らむ一方で、具体的な歯止め策は示されず、首相が会見で強調していた「限定容認」「必要最小限」のアピールは空虚に聞こえるばかりだ。

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 安倍首相は、自衛隊の海外任務拡大に向け、憲法が禁じる「他国の武力行使との一体化」の制限緩和を検討する方針を示した。一体化を避けるために設けてきた「非戦闘地域」の考え方の見直しにも言及した。

 「行使が憲法上許容されても、実際に武力行使するか否かは高度な政治的決断だ。時の内閣が総合的に判断し、慎重に決断することになる」と理解を求めた。

 だが、何をもって判断するのかが示されず、結局は首相の手の中にある、というのでは歯止めはないに等しい。

 首相は外交防衛委で、年末の日米防衛協力指針(ガイドライン)見直しまでに、閣議決定したいとの意向を表明した。国民不在の一方的なスケジュールだ。

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 共同通信社が17、18両日に実施した全国世論調査では、行使容認への反対が48・1%となり、賛成を9ポイント上回った。憲法改正によらず解釈変更によって行使を認める考えに反対との回答も51・3%と半数を超えた。容認に前のめり姿勢の安倍首相と世論との乖離(かいり)は大きい。

 国の安全保障の根幹に関わる岐路に今立っている。自民、公明両党の与党協議も進むが、国会でも引き続き徹底的に議論すべきだ。

 たった2日間の審議で議論が生煮えのまま終わらせることは許されない。