本土復帰前の軍雇用員のアスベスト(石綿)被害救済に向けて、沖縄県は2日までに、所有する「軍雇用員カード」約20万人分を電子データ化する方針を固めた。本年度内に作業に着手し、活用法を検討中の厚生労働省が使いやすいよう整備する。救済以外に使用しないとの条件付きで、プライバシーの問題から提供が困難視されていたカードの閲覧者リストも厚労省に提供する。(篠原知恵)

 米軍に直接雇用されていた復帰前の軍雇用員をめぐっては、日米間で雇用責任が曖昧にされてきた上、体系的な情報がないため制度の直接案内ができず、救済が進んでいない。

 カードは復帰前で唯一残る詳細な就労記録で、制度の周知などに利活用されれば、救済の道が大きく広がる可能性がある。

 カードを所有する県は、2013年度から取り組む「琉球政府文書デジタルアーカイブズ推進事業」で電子化を進める。来年度までの作業計画では、カードの電子化を予定していなかったが、救済対象者の高齢化が進む中で対策が急がれることから、前倒しして着手する。

 厚労省と連携して活用法を検討している沖縄労働局にも近く、県の方針を伝える。

 カードは石綿被害に遭った可能性のある人を絞り込んで制度内容を直接案内できるほか、救済を受ける際に必要となる石綿関連作業歴の証明などに活用が期待されている。

 現状では紙ベースの保存で、閲覧希望に応じて公文書館の職員が手作業で20万枚の中から希望のカードを探す状態。

 全駐労沖縄地区本部などが国や県に活用を求めてきたが、数が膨大で個人情報も含まれることから、積極的な活用がなされてこなかった。

 全駐労の與那覇栄蔵委員長は「復帰前の基地労働者の石綿被害救済は、戦後処理の観点から非常に重要だ」と指摘。「救済制度を知らない人が多く、どう周知するかが一番の課題だった。県と厚労省がカードを活用して周知徹底し、救済につなげてほしい」と述べ、県の対応を歓迎した。