民主化を求める学生、市民のデモは中国全土に広がり、6週間以上も続いた。中国当局は1989年5月20日、首都北京に戒厳令を施行し、ついに6月4日未明、重装備の人民解放軍を天安門広場などに投入し、学生や市民を武力で鎮圧した。

 国際社会に大きな衝撃を与えた中国の天安門事件から、きょうで25年になる。

 中国政府は、軍側を含め319人の死者と約9千人の負傷者が出たと発表したが、正確な数は今もはっきりしない。天安門事件で子供を亡くした親の組織「天安門の母」は今年2月、事件の再評価と真相究明を求める書簡をネット上に発表した。

 だが、中国政府の対応は全く逆だ。人権派弁護士や民主化を求める活動家を相次いで拘束し、事件に関する記念行事や追悼の動きを徹底的に抑え込んでいる。国内の記者らに対しては、短文投稿サイトの微博(ウェイボ)に「事件を含むいかなる書き込みもするな」と指示した。

 当局が、抗議行動の動きに異常なほど神経をとがらせているのはなぜか。

 実力者☆(登の右に郊のツクリ)小平は、中国にとって最も重要なのは安定した秩序であり、「不安定をもたらしかねないものは何であれ警戒し、抑え込まなくてはならない」と天安門事件を総括したという。

 武力による鎮圧は、中国という国家を分裂させないための唯一の方法だった、との解釈だ。だが、ここにこそ、現代中国が抱える根本的な危うさと困難が露呈しているというべきだろう。

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 この四半世紀に中国経済は驚異的な発展を遂げた。2013年の国内総生産(GDP)は56兆8845億元(約950兆円)と1989年の33倍以上に達する。都市化が進み、富裕層が増えた。

 その半面、経済格差の広がりや汚職の横行、環境破壊、民族問題など、経済力や軍事力の増大とは裏腹に、社会問題は深刻化する一方だ。治安維持のため毎年、膨大な国家予算を投入しているにもかかわらず、社会の安定にはつながっていない。今の中国は、社会の発展があまりにもいびつである。

 中国政府が「新疆ウイグル自治区の分裂主義勢力による組織的な暴力テロ事件」と位置づける無差別テロが多発しているが、テロ対策を強化するだけでなく、少数民族政策の見直しが必要なのではないか。

 東シナ海や南シナ海での強硬姿勢といい、国内外で強権的、大国主義的な対応が目につく。

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 中国当局が「民主化」よりも「体制維持」を優先するのは、天安門事件から1年もたたないうちにベルリンの壁が壊され、東欧の社会主義政権が相次いで崩壊するという「恐怖」を味わったからかもしれない。

 だが、市場経済が浸透した中国で、いつまでも強権的、抑圧的な手法で体制を維持し続けることはできない。民主化を推し進め、法の支配と国際協調を根付かせることが国際社会の信頼を勝ち取る唯一の道である。