認知症というと、高齢者と結びつけてしまいがちだが、18歳から65歳未満の人が発症すれば「若年性認知症」と呼ばれる。県が初めてその実態調査に乗り出し、報告書を公表した。県内で392人に上ることが分かった。

 厚生労働省が2011年に発表した推計によると、全国の若年性認知症は3万7800人。18~64歳人口における10万人当たりの患者は47・6人。県が今回の調査結果を基に試算したところ、県内は45・2人に相当する。

 県の調査は医療機関や施設に調査票を送り、さらに本人・家族へアンケートを実施する2段階の手順を踏んだ。

 受診していない人や治療を受けていない人が調査からこぼれ落ちていることを考慮すると、実数はもっと多いとみた方がよさそうだ。

 若年性認知症は高齢者の認知症と比べ、進行が速いといわれる。働き盛りの現役世代であれば、家族全体が経済的にも介護面からも大きな打撃を受ける。本人が家庭の経済的中心になっている場合にはなおさら深刻だ。

 本人・家族へのアンケートの回収は104件(22・45%)にとどまったが、それでも厳しい環境に追い込まれていることがはっきりする。

 自由に意見・要望を書く欄では、経済的苦境を訴え、支援を求める悲痛な声が並ぶ。

 発症時に仕事についていた人は約4割いるが、退職・解雇が8割を超える。発症してもすぐに何もできなくなるわけではない。就労可能な部署に配置転換したり、精神障害者手帳などを取得すれば障がい者枠で継続雇用することも可能だ。それには職場の理解と協力が欠かせない。

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 「物忘れ」など症状に気づいてから1年未満で受診した人は半数にとどまる。若年性認知症を疑うことをしないからだろう。医療関係者も同様で初診の病院で正確に診断された人は約3割にすぎない。

 介護者は配偶者が最も多かった。経済的困窮とともに、ほとんどの介護者が負担の大きさを訴えている。発症前と比べると、生活が一変したことがうかがえる。

 具体的な負担として「ストレス増」「自由時間がなくなった」「睡眠時間が減った」と続く。「体調が悪くなった」介護者も4割近くいる。「怒鳴りつけてしまいそうになった(怒鳴りつけた)」ことも半数が経験し、介護環境の過酷さが浮かび上がる。

 半数が「近所の人に、認知症であることを知らせていない」。近隣住民の無理解や偏見を恐れているからだろう。

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 県の対策は緒についたばかりだ。アンケートで寄せられた本人・家族からの切実な声を生かし、本格的な支援の始まりにしてほしい。

 県は本年度、若年性に特化した「サポートハンドブック」を作成する方針だ。1冊あれば、受けられる公的サービスなどの制度を含め、必要な情報がすべて盛り込まれたハンドブックを目指す。

 身近な市町村は、窓口でワンストップで対応できるよう整備を進めてほしい。偏見をなくするための県の取り組みも引き続き求められている。