事は国の在り方と国民の運命を変えるような重大な問題である。与党協議だけで閣議決定するという手法は到底容認できない。

 集団的自衛権の行使を認める閣議決定をめぐる自民、公明両党の与党協議が本格化する。安倍晋三首相は、22日に会期末を迎える今国会中の閣議決定に執念を燃やしている。まさに姑息(こそく)で危うい「暴走」としか言いようがない。

 公明党は、集団的自衛権の行使容認に慎重姿勢を崩していない。政府・自民党が繰り出す「抱き込み策」に乗ってはならない。政権離脱の選択も排除せず、ブレーキ役を果たさなければならない。

 与党協議における政府の手法は狡猾(こうかつ)ともいえるやり方だ。ハードルの高い条件を提示し、反発を受けると引っ込める。譲歩の姿勢を見せながら核心部分の「実」を取る手法である。

 自衛隊による他国軍への後方支援拡大で、憲法が禁じる「他国との武力行使の一体化」を認めるような内容の4条件を提示。公明党の強い反発を受けるとすぐに撤回し、新たな3条件を示した。ただし、従来の「戦闘地域」「非戦闘地域」の考え方を撤廃するなど、後方支援拡大の方向性は変えていない。

 自民党の高村正彦副総裁は公明党の説得材料として、集団的自衛権行使の歯止め策を指針として作成するよう政府に求めている。「日本の安全に重大な影響が出る場合」「第三国の領域通過に許可を得る」などの行使条件が盛り込まれる方向だが、あいまいで拡大解釈も可能であり、歯止め策とならない。

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 「今後のスケジュールについては期限ありきではない」安倍首相は、5月15日の記者会見でこう述べた。

 首相はもともと秋の臨時国会前までに閣議決定するのを最終期限としていた。だが、公明党が予想以上に抵抗し与党協議を引き延ばす姿勢を見せているため、年末の「日米防衛協力指針」(ガイドライン)の見直しに間に合わせるよう今国会中の決着へとかじを切った。

 6日には訪問先のローマで記者団に「公明党にも議論を加速化させることについて理解をいただいている」と語るなど、圧力ともとれる姿勢を鮮明にした。

 しかし、米国防総省のリッパート長官首席補佐官が5月にワシントンで講演し、防衛協力指針改定については、時期より内容を重視する考えを表明した。米国は年内にこだわっていないのである。

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 集団的自衛権の行使容認に国民的合意はない。ましてや今国会中の閣議決定はあまりに乱暴である。共同通信の5月の世論調査では反対が48・1%で賛成は39%にとどまった。また行使容認に賛成する回答者の64・1%が「期限ありきでない」慎重な議論を求めている。

 そもそも、憲法9条下での集団的自衛権の行使については、長年の国会論議を重ね、歴代内閣が禁じてきたものである。一内閣が閣議決定で行使を容認することは、国権の最高機関としての国会をないがしろにするものである。