書家の浜野龍峰さん(54)=愛知県豊橋市=が4月から5月の38日間、筆600本、墨液3リットルを持って南米4カ国を訪れ、沖縄県系人らに書の手ほどきをした。名前を漢字で書けない3~5世の若者が中心で、「みんな筆を持って大喜び。書には日本人のアイデンティティーを呼び覚ます力がある」と語る。(阿部岳)

アルゼンチンの県人会館で手本を見せる浜野龍峰さん(中央)=5月9日、ブエノスアイレス(本人提供)

 20年ほど前、ハワイ旅行中に日系人と出会い、移民の歴史に関心を持った浜野さん。移民の名字を連ねた大作をハワイと横浜市の国際協力機構(JICA)海外移住資料館で展示するなど、移民にささげる書作を続けてきた。

 今回はハワイから目を移し、ブラジル、アルゼンチン、ペルー、パラグアイの4カ国を巡った。アルゼンチンの県人会を含め、各地で約30回のワークショップや講演をした。

 県系人も多いペルーの日系校ヒデヨ・ノグチ校では、50人以上の生徒に「道」という字を書いてもらった。「ここには一つとして同じ『道』はない。一人一人が生きる力をつけ、たくましく進んでほしい」と語り掛けた。

 持っていった600本の筆は地元豊橋市の子どもや、メーカーの協力で集まった。「税関で怪しまれたりもしたが、思いが込められた筆を渡せて良かった。心のどこかに日本を置いてもらえれば」と願う。

 終了後には自分の名前の漢字を教えてほしい、と行列ができることも多かった。「比嘉と何回書いたことか。東江も書けるようになりました」と笑いつつ、「今後も南米と沖縄に関わりたい」と話した。