政府・自民党が今国会会期末の20日前後に、憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を強引に進めようとする中で開かれた党首討論だったのに、論戦は盛り上がりに欠けた。

 安倍晋三首相(自民党総裁)と、民主党の海江田万里代表、日本維新の会の石原慎太郎共同代表、みんなの党の浅尾慶一郎代表との党首討論が11日午後行われた。議論は深まらず、野党側のばらばら感だけが目立った。

 とりわけ野党第1党の民主党の責任は重大だ。海江田氏は安倍首相を攻めあぐねた。集団的自衛権の行使について民主党が党としての意思統一ができていないからである。

 民主党は「行使一般を容認する解釈変更は許されない」とする党見解をまとめているが、「一般」という表現を盛り込み、一部事例については容認する余地を残している。

 党内には限定的容認論を唱える前原誠司元外相ら保守系議員の勢力が存在するからだ。足元では野党再編をにらんだ動きや代表交代を求める声もくすぶる。一枚岩になりきれていないのである。

 党首討論で海江田氏は、国民を代表する国会の場における議論がほとんどなく集団的自衛権の行使容認の閣議決定をするのは、「拙速である」と批判し、「堂々と憲法改正の発議をすべきだ」などと安倍首相に迫った。

 これに対し、安倍首相は「民主党の立場がよく分からない」と皮肉り、閣議決定する考えを変えなかった。議論はすれ違いに終わった。

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 安倍首相は今国会中の閣議決定に前のめりだ。高村正彦副総裁に「『集団的自衛権』という言葉をしっかり入れて、自公両党が合意できるように」と指示した。

 公明党との与党協議会はまだ5回しか開かれていない。しかも集団的自衛権に関する協議は始まったばかりだ。

 政府・自民党は閣議決定の原案を準備し、内閣法制局も了承しているというから、乱暴極まりない進め方というほかなく、会期末に閣議決定して国会論議を封じようとしているとしかみえない。

 閣議決定の原案は1972年の政府見解を論拠にしている。自衛権行使を「国民の権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認され、必要最小限度の範囲にとどめるべきだ」と規定。当時は他国を防衛する集団的自衛権の行使は「憲法上許されない」という結論を導いている。

 だが、閣議決定では日本の防衛に関係する集団的自衛権の行使も認めていると読み替える考えだ。都合のいいように曲解した論法である。

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 野党の存在感が希薄であることも安倍政権を利している。党首討論でみんなの浅尾氏は経済政策を取り上げた。疑問と言わざるを得ない。

 安倍首相は、集団的自衛権の行使容認に理解を示す日本維新、みんなの両党を「こういう立場こそ政治家の責任だ」と持ち上げてみせた。

 憲法解釈変更の根拠は整合性に著しく欠ける。こんなドタバタ劇の中で、戦後日本が営々と築いた平和主義を捨て去るのはとうてい許せない。