「サッカーって呼ぶのはアメリカ人と日本人だけ。この星のほとんどの人はあの美しいゲームをフットボールと呼ぶんだよ」。学生時代、イタリア人の友人にからかわれたことがある

 ▼調べてみると実際は2カ国だけではないが、ほぼ当たっていた。強豪の多い欧州や南米では例外なくフットボールだ。「サッカーって呼んでいるうちはワールドカップで勝てない」。誇らしげにジョークを飛ばした彼は20年後の昨日、日本の逆転負けを見て同じせりふを口にしたかもしれない

 ▼4年に1度のW杯が始まった。徹底してショートパスにこだわるメキシコの健在ぶりを喜んだり、前回王者に大勝したオランダの切れ味鋭いカウンター攻撃に驚いたり、各国の個性的な戦いを見るのが楽しい

 ▼路地裏でボール一つで楽しめるため「貧者のスポーツ」とも呼ばれる。ナショナリズム発揚の心配はあるが、紛争や貧困に苦しむ地域で希望の光をともしてきた側面は見逃せない

 ▼前出の友人の言葉には世界の政治や経済を牛耳る米国への反発もにじむ。米国がナンバーワンではない数少ないメジャースポーツ。ここでは好き勝手させない、という世界中の人々の意地を代弁した言葉にも思える

 ▼GDPは関係ない真剣勝負。小国が大国を倒すドラマもある。夜更かしと早起きを繰り返す日々が続きそうだ。(田嶋正雄)