お金では取り戻すことができないかけがえのないふるさとを失い、帰るに帰れぬ被災者の苦悩に思いをいたすことができないばかりか、傷口に塩を塗り込むような暴言である。こんな人に環境行政を任せることはとてもできない。

 東京電力福島第1原発事故に伴う除染廃棄物を保管する国の中間貯蔵施設建設をめぐり、石原伸晃環境相は16日、「最後は金目でしょ」と言ってのけた。地域コミュニティーを引き裂かれ、将来を見通せない不安と困難の中で生活する被災者の頬を札束でひっぱたくようなものである。

 中間貯蔵施設の候補地となっている双葉、大熊両町を対象にした国の住民説明会が終わり、石原氏は菅義偉官房長官に報告した。記者団の取材を受け、問題の発言が飛び出した。その後、石原氏は発言を陳謝したが、撤回はしていない。「金で解決できる」というおごりと傲慢(ごうまん)に満ちた「本音」の発言に違いない。

 翌日の記者会見でこんなやりとりがあった。地元紙の記者が「人間というものは頭の中で考えていないことはしゃべれない。いざという時に金目という言葉が出るのは不適切だ」とまっとうな指摘をした上で「県民の信頼関係に応えていける交渉役になれると考えるか」と問いただした。

 石原氏はこれに直接答えず、「被災地の皆さま方の心に寄り添って対応していく。その心構えはこれまでも、これからも何の変更もありません」と言った。「金目発言」のどこが、「被災者の心に寄り添った対応なのか」。開いた口がふさがらない。

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 福島県議会は平出孝朗議長名で抗議文を送付した。佐藤雄平知事も「住民の気持ちを踏みにじる発言だ」と怒り、伊沢史朗双葉町長、渡辺利綱大熊町長も批判した。身内の自民党福島県議団も、石原氏に直接抗議した。当然である。中間貯蔵施設の交渉が難航していることから、石原氏は、補償や賠償など地元はカネ目当てだと意図的に誤解を与えるような発言をしたのではないかと勘ぐりたくなる。

 中間貯蔵施設について国は第1原発がある双葉、大熊両町にまたがる約16平方キロを候補地として決めているが、両町は受け入れていない。

 両町の住民は全て避難している。国は買い上げて国有地とする方針だが、「先祖代々の土地は手放せない」と借地を望む声もある。国は来年1月からの搬入を計画し「30年以内に県外に運び出し最終処分する」と法律に明文化することを約束している。だが、そのまま最終処分場になるのでは、との疑念が消えない。

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 説明会は5月31日から県内外で計16回開かれた。補償内容など国側の説明は具体性に欠けた。石原氏は1度も参加していない。被災者と真摯(しんし)に向き合おうとしない姿勢を象徴しているというほかない。

 野党時代の2012年、自民党幹事長だった石原氏は、汚染土壌の保管先は「福島原発第1サティアンしかない」とオウム真理教の教団関連施設に例えて発言したことがある。「被災者に寄り添う」とうわべだけ取り繕う。そんな環境相はいらない。