あの誓いは何だったのか。

 県は23日の沖縄全戦没者追悼式で仲井真弘多知事が読み上げる平和宣言に、米軍普天間飛行場の県外移設要求を盛り込まない方針だという。

 知事は昨年までの3年間、県民世論を代弁する形で「県外移設」を訴えていた。昨年の宣言文はこうだ。

 「沖縄は、今もなお、米軍基地の過重な負担を強いられています。日米両政府に対して、一日も早い普天間飛行場の県外移設、そして、日米地位協定の抜本的な見直しなどを強く求めます」

 今年の宣言では「普天間」や「地位協定」など個別、具体的な要求には触れない方針という。「沖縄戦の犠牲者を慰霊する場であり、政府への要求や政治的なメッセージはふさわしくない」というのが県関係者の説明だ。

 あぜんとするほかない。

 沖縄戦という未曽有の悲劇を体験した沖縄の平和宣言は単なるお題目ではない。

 知事は、沖縄全戦没者追悼式という戦場の記憶を呼び覚ます公式の場で、過去3回にわたって多くの参列者を前に県外移設を主張してきた。

 その重みを、いとも簡単にかなぐり捨てるのか。誤りだったというのであれば、重要政策の方針転換だ。県外移設要求を削除する理由は何か。知事は追悼式までに、自らの言葉で県民に説明すべきだ。

 われわれは、今月11日付の社説で「知事の考えを聞きたい」と平和宣言の内容をあらかじめ問うた。県民の思いを内外に発信する上で、極めて重要な意味をもつ、との認識に立つからだ。

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 平和宣言は、県民の思いを代弁するからこそ重みのあるメッセージとなる。県民の理解と共感の得られない宣言は精彩を欠き、対外的にも発信力は弱くなる。

 昨年12月に辺野古移設に伴う埋め立てを承認した際も、知事の県民への説明は極めて不十分だった。県外移設の公約を変えていないとするスタンスとの整合が、知事には厳しく問われている。

 県民の声に耳を傾けようとしない仲井真知事に、ぜひ参考にしてもらいたいのが長崎市の平和宣言だ。

 8月9日に行われる平和祈念式典で、長崎市長が読み上げる平和宣言文は、被爆者を含む市民が委員を務める起草委員会の意見を反映して作成される。昨年は核不拡散条約(NPT)再検討会議準備委で、核の非人道性を訴える共同声明に賛同しなかった日本政府を批判。2012年は国に「脱原発」を求めた。

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 昨年の平和宣言で仲井真知事は「私たちは、沖縄戦の教訓を継承するとともに、わが国が築いてきた平和主義の堅持を強く望む」と訴えた。

 憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使容認に踏み切ろうとする安倍晋三首相に対し、仲井真知事は今年の平和宣言文で、どのように「平和主義の堅持」を求めるつもりなのだろうか。

 辺野古では埋め立てに向けた作業が、反対派の強制排除を前提に名護市の声を無視して強引に進められている。

 政府の姿勢を追認するだけの平和宣言文なら不要だ。