戦争とどう向き合うか。戦後、多くの表現者はこの問題に直面してきた。漫画家も例外ではない。手塚治虫、赤塚不二夫、藤子・F・不二雄、楳図かずおら各作家が戦場や原爆、疎開などのテーマを取り上げてきた

 ▼「かわいそうなぞう」や「ガラスのうさぎ」を世に出した出版社「金の星社」が昨年、「漫画家たちの戦争」全6巻を発刊した

 ▼「原爆といのち」「子どもたちの戦争」「戦争の傷あと」などで各巻を構成。監修した中野晴行さんは「子どもたちに二度と戦争の悲しみを繰り返さないために」と目的を記している

 ▼「原爆といのち」は東日本大震災による福島原発事故を経て、原爆投下や原爆症の悲劇をもう一度伝え直す必要があると、作品が集められた

 ▼その中に「はだしのゲン」の作者、中沢啓治さんの自伝的作品「おれは見た」が収録された。戦後20年で亡くなった母親の遺体を火葬したシーンで細かい灰しか残らなかった。主人公は「原爆の放射能め、おふくろの骨までくいつぶしやがった」と憤る。中沢さんの実体験で、原爆の悲劇を描く転機になった

 ▼漫画の表現が残酷と批判されることがある。現実の戦争はもっとむごたらしいものだ。体験を語る人は年々少なくなる。戦争の実相に目を背けず、あらゆる表現で次世代に伝えることが今を生きるわれわれの責務だ。(与那原良彦)