集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定を受け、共同通信社が1、2両日実施した全国緊急電話世論調査によると、行使容認への反対は54・4%で半数を超え、賛成は34・6%だった。安倍晋三首相が踏み切った行使容認に国民が納得していない実態が浮かんだ。

 行使容認によって抑止力が高まる、との首相の説明に対し、「抑止力が高まる」「どちらかといえば抑止力が高まる」との答えは計34・0%。逆に「戦争に巻き込まれる可能性が高まる」「どちらかといえば戦争に巻き込まれる可能性が高まる」との見方が計61・2%と大幅に上回った。

 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書の提出を受けた5月15日。安倍首相は会見で、集団的自衛権の行使をめぐって「あらゆる事態に対処できる法整備によって、抑止力が高まり、戦争に巻き込まれることがなくなる」と述べた。

 「戦争のできる国にすることが、戦争に巻き込まれないための有効な術(すべ)である」という、この論は支離滅裂だ。

 しかし、「抑止力」という実態不明な言葉をまぶされると、何となく納得したような気持ちになる人も少なくないのではないか。抑止力とは、相手国がどう受け止めるかを考えるのが基本だ。

 集団的自衛権の行使容認によって、日本は本当に「より安心」な国になるのか。中国の海洋進出を阻止できるだろうか。「抑止力」という言葉の前で思考停止に陥ることなく、その内実を冷静に問う必要がある。

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 集団的自衛権の行使を容認する日本の閣議決定を受け、中国外務省の洪磊副報道局長は「日本が戦後長期にわたり堅持してきた平和発展の道を変えるのではないか、と疑問を持たざるをえない」と懸念を表明した。一方、韓国外務省の魯光鎰報道官は「朝鮮半島の安全保障や韓国の国益に影響を及ぼす場合、韓国の要請や同意なしには(行使を)決して容認できない」と慎重な運用をあらためて求めた。

 安倍首相が進める「中国包囲網」に傾注した政策では外交の糸口はつかめない。歴史認識などで韓国との信頼関係を回復しなければ、北朝鮮への対応も制約される。

 敵と味方を単純に色分けする冷戦型思考では、複雑な利害が絡む21世紀の国際秩序の安定は図れない。自国の安全を高めるための措置が、相手国に「脅威」や「挑発」と映り、軍拡競争を招く事態は避けなければならない。

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 閣議決定は変更されることもある。

 政府は2006年、在日米軍再編に関する日米の最終報告を「的確かつ迅速に実施する」と明記した方針を閣議決定した。

 これに伴い、米軍普天間飛行場の移設先を名護市辺野古キャンプ・シュワブ沖とし「軍民共用」「15年使用期限」などの方針を示した1999年の閣議決定は廃止された。

 政府は今後、集団的自衛権の行使を認める関連法案の全体像を示す考えだ。国民の理解の得られない法整備は、国会審議ではねつけるべきだ。