ハワイや南米各国には、沖縄から多くの人々が移民し、慣れない土地で苦難の歴史を歩んできた。現地社会で根付きながらも、遠く離れた沖縄への思いを募らせてきた

 ▼県出身の人気バンドBEGINの「金網移民」はボリビア、ペルーよりも遠い沖縄を歌う。古里に居て、帰れない古里。フェンスで遮られた米軍基地にある代々の墓を拝む情景がつづられる。米軍に奪われた土地に眠る先祖に問いかける。「そこから何が見えますか 歌三線ありますか」

 ▼BEGINは先月28日に開かれた「うたの日コンサート」でこの曲を歌った。会場は、基地が約8割を占める嘉手納町の海浜公園。ボーカル・比嘉栄昇さんの「肝苦(ちむぐり)りさ 肝苦りさ」のリフレインは優しく、そして切なく響いた

 ▼作家の辺見庸さんは新著『明日なき今日』でこの曲を取り上げ、肝苦りさは同情ではなく、「内臓がかきまわされるような激痛をともなう奥深い身体感覚」と指摘した

 ▼名護市辺野古の沖合では、政府が新基地建設に向け、制限区域を囲む海のフェンス設置をもくろむ。請け負う企業との契約など準備を着々と進めている

 ▼住民らの抵抗を力ずくで排除しようとする事態に「気の毒」「心苦しい」という傍観者の立場でいいのか。辺見さんはいう。「『肝苦りさ』-闘いの原点はここにしかない」。(与那原良彦)