中国の習近平国家主席が就任後初めて韓国を訪問し、朴槿恵大統領と会談した。

 両首脳は共同声明で「朝鮮半島での核兵器開発に断固反対する」と、強い表現で北朝鮮に対する姿勢を示した。また中韓自由貿易協定(FTA)の年内妥結を目指すことで合意するなど、経済分野での関係強化をアピールした。

 中国の最高指導者が「血で固めた同盟」と言われる関係を結んできた北朝鮮より先に韓国を訪問したのは1992年の中韓国交正常化以来初めてだ。北朝鮮の度重なる核実験やミサイル発射にいらだちを募らせる中国が、韓国との協力を選択した現実的な戦略であろう。

 一方、北朝鮮は、日本人拉致問題で再調査を約束し、日本から経済制裁の一部解除を取り付けるなど対日外交に活路を見いだそうとしている。日本の対応に中韓首脳は「北朝鮮核問題解決の国際的な協調体制を壊す憂慮がある」と警戒心を抱いているという。

 しかし、拉致問題は人道問題であり、解決を急がなければならない。日朝交渉の進展は、朝鮮半島をめぐる緊張緩和の動きでもある。日本は拉致問題の交渉と合わせ、米国や中韓との連携を図り、北朝鮮の核・ミサイル問題の解決に向けて役割を果たす外交力が問われている。

 中韓両首脳は、中断している6カ国協議の再開に向けた各国の条件整備への努力でも一致した。2国間関係を軸に、日本や北朝鮮、米ロを加えた多国間対話を促進し、東アジア地域の平和と安定を実現しなければならない。

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 今回の首脳会談では、歴史問題での「対日共闘」が注目されたが、共同声明や共同記者会見では言及しなかった。旧日本軍の慰安婦問題については付属文書で中韓による共同研究を進めると明記したが日本を名指しした批判はなく、抑制的だった。

 付属文書には「日中韓の3カ国協力が重要」と盛り込まれた。中韓両国が、対日関係のこれ以上の悪化は避けたいという意思とも受け取られる。日本はこれを糸口に関係改善の道筋を探るべきだ。

 ただ、気掛かりなのは、首脳会談翌日の昼食会で、日本が慰安婦に関する河野洋平官房長官談話の作成過程を検証したことに対し両首脳が「不適切」「談話の価値をおとしめる試み」との認識で一致。さらに習氏がソウル大で演説し「日本軍国主義は中韓両国に対し野蛮な侵略行為を行った」と、歴史問題に絡めて日本を批判したことだ。

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 米国のオバマ大統領は4月の日米首脳会談の記者会見で日中関係について「対話と信頼構築ではなく、事態を悪化させる行為をとり続けることは大きな誤り」と指摘した。

 日本に求められるのは、近隣諸国との信頼構築である。いまだに日中首脳会談が開かれないのは、異常な事態と言わざるを得ない。

 11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を日中、日韓の首脳会談を実現する好機としたい。3カ国の首脳の対話が、東アジア安定に道を開くきっかけとなろう。