「数十年に1度」の並外れた勢力の台風8号が7日、発達しながら沖縄へ迫った。沖縄気象台は「私たちがこれまで経験したことがない、甚大な被害発生の恐れがある」という異例の表現で、非常事態への警戒を呼び掛けた。県内各地で漁師や農家などが風雨対策に追われたほか、38市町村に避難所が開設され、身を寄せた人々が不安な一夜を過ごした。

池間大橋の通行を止めるため鋼製のゲートを設置する県宮古土木事務所の職員ら=7日午後8時27分ごろ、宮古島市平良狩俣

 全国初の台風の「特別警報」が出された宮古島市では7日、刻一刻と荒くなる波を背に漁船や遊覧船を陸に揚げて固定する姿も。また、本島南部や北部の農家は、収穫前の野菜や果物を前に険しい表情を浮かべていた。

 日が沈むころには強い風で通りの木々が激しく揺れ、普段、観光客でにぎわう西里通りに出歩く人はまばら。仕事帰りに買い物していた平良恵儀さん(55)は「風もかなり強く不安だ。早く帰って、対策をしっかりしたい」と家路を急いだ。

 宮古島市では2003年、最大瞬間風速74・1メートルを記録した台風14号の大きな被害が頭をよぎる島民も多く、漁師や農家は台風対策に追われ、行政機関は警戒を強めていた。

 平良港で陸揚げした実習船を固定する作業をしていたのは宮古総合実業高の海洋科学科の生徒たち。台風14号では、万全の対策をしたつもりだったが、別の実習船がひっくり返り、大きく破損したという。

 前泊光男教諭は「自然の力は想定できない」。同校2年の伊計大地君(16)は「台風14号の時は、幼稚園生だったが電柱がたくさん倒れたのを覚えている」と真剣な表情だった。

 糸満市真栄平では農家金城進一さん(75)が家族総出で収穫期の約990平方メートルのヘチマ畑にネットを設置。「直撃すると風でネットが飛ばされないか心配だがこれぐらいしかできない。台風が長引くと塩害が心配だ」と声をくもらせた。

 マンゴー栽培用のビニールハウスが並ぶ豊見城市饒波では時折強風が吹く中、昼すぎから農家が鉄骨の補強などを行った。長嶺政勝さん(56)は「あと1週間くらいで収穫できたのに」とぽつり。今季はまだ全体の1割しか収穫していない。「想定通りの台風が来たら今年は無理。半分あきらめています」と悔しそう。

 名護市我部のキク農家は花の親株にネットをかける作業に追われた。農家の男性(73)は「親株がなくなったら年末用のキクが出荷できなくなる」と話した。