東京電力福島第1原発事故から3年4カ月。国内で原発が1基も稼働しない完全な「原発ゼロの夏」を初めて迎えた。安倍政権は原発の再稼働に前のめりだが、いまだに12万人以上の被災者に避難を強いている原発の過酷事故の教訓を忘れてはならない。

 青森県の下北半島は、原子力関連施設が集中している地域である。斧(おの)のような形をした同半島には、使用済み核燃料再処理工場をはじめ、東通原発、大間原発などの施設が広範囲に点在している。

 これらの施設を共同通信加盟社論説研究会のメンバーらと視察した。

 六ケ所村にある日本原燃の使用済み核燃料再処理工場は、国が国策として進めてきた核燃料サイクル事業の中核となる施設である。

 広大な敷地には再処理工場のほか、ウラン濃縮工場やプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料工場、放射性廃棄物の貯蔵管理センターなど、核燃料サイクル施設がひしめく。

 二重、三重のチェックを受けて敷地内に入ると、巨大で無機質な工場の建物群に圧倒される。

 再処理工場は、使用済みの核燃料を化学処理し、ウランとプルトニウムを取り出す施設である。1993年に着工し、97年の完成を目指したがトラブルが頻発し、完成時期を21回延期。ことし10月の完成を目指し1月に審査を申請した。しかし原子力規制委員会の審査で準備不足が厳しく指摘されるなど、審査は長期化する可能性がある。

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 政府はエネルギー基本計画で核燃料サイクル政策の推進をうたっている。しかし、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し利用する核燃料サイクルは、行き詰まっているのが実情だ。

 再処理工場完成の遅れやプルトニウムを燃料に使う高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の度重なるトラブル、さらにプルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を使うプルサーマルも、安全性への懸念がある。

 そのMOX燃料を全炉心で使用する大間原発。すべての原発が停止する中で、建設が進む現場には活気があふれていた。だが、津軽海峡を挟んで最短で20キロの距離にある北海道・函館市は、同原発に懸念を抱き、建設差し止めなどを求めて訴訟を起こした。

 3日の第1回口頭弁論で函館市の工藤寿樹市長は「市の存在が同意もなく危険にさらされ、市民の命が奪われかねない」と述べた。この訴えは当然であろう。

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 福島原発事故以来、原発をめぐるさまざまな矛盾が浮き彫りになった。使用済み核燃料プールの容量が限界に達すれば、全国の原発にある1万トン以上の使用済み核燃料は行き場を失う。核燃料サイクルの再処理の過程で出る高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定も進んでいない。

 過酷事故への対策などを義務づけた原発の規制基準が施行されて1年が過ぎた。「再稼働ありき」の圧力の中で国策の矛盾とつけを地方に押し付けるようなことがあってはならない。