全国でも初めて、台風で特別警報が出た。県内41市町村のうち19市町村約59万人に避難勧告が出るというのも前代未聞である。いったん解除された大雨特別警報が4時間半後に再び発表され、学校現場などで混乱が生じた。これも異例だ。

 台風8号は、異例づくめの猛烈な雨台風だった。

 読谷村では9日、1時間に96・5ミリの猛烈な雨を記録し、名護市や国頭村では24時間雨量が400ミリを超えた。うるま市では天願川が氾濫し、道路が人の腰のあたりまで冠水、消防がボートを出して救助に当たった。

 県内各地で住宅浸水、道路冠水、土砂崩れ、車の横転、倒木などの被害が相次いだ。

 特別警報は、数十年に一度の大災害が起こると予想される場合に、最大限の警戒を呼び掛け、発表される。

 「重大な危険が差し迫った異常事態」「身を守るため適切な行動を取ってください」

 気象庁や沖縄気象台、首相官邸ホームページなどの表現は、県民を驚かせ、不安にさせた。このような切迫感に満ちた最大級の警戒呼び掛けは、台風接近では一度も聞いたことがない。台風に慣れっこになって対策を怠りがちだった県民に緊張感を与えたのは確かだ。

 台風に対して特別警報を適用した初の事例だけに気象庁や沖縄気象台は、県民が特別警報発表にどう反応し対策に生かしたのか、を調査してほしい。

 言葉の表現や発表のタイミングが妥当だったかどうか、も気になるところだ。

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 暴風、大雨などの特別警報は9日午前3時前に全て解除された。朝になって再び大雨特別警報が出たのを知らずに登校し、学校に着いてから休校を知らされた児童も多かった。

 住民に対する避難情報は、「避難準備情報」に始まって、被害が予想される住民に避難を勧める「避難勧告」、人的被害の危険性が非常に高まったときに発表される「避難指示」などがある。19市町村のおよそ59万人に避難勧告が出たのに対し、実際に避難した人たちは30市町村1041人だったという。

 自治体はメールやホームページで避難勧告を知らせた。だが、どこに避難すればいいのか。誰を対象に避難勧告を出したのか。自主的に判断すればいいだけの話なのか。自治体には住民からの問い合わせが相次いだ。

 避難先の宜野湾市老人福祉センターは、8日午後に停電し、クーラーが止まった。

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 台風8号は沖縄から遠ざかったが、記録的な大雨の影響で各地の地盤は緩んでおり、引き続き土砂災害への警戒が必要だ。

 住宅事情の改善、河川の改修などによって台風常襲地帯の沖縄は、以前とは比べものにならないほど「台風に強い地域」に変身した。その半面、「風には強いが雨にはもろい」という社会構造が形成されつつあるようにも見える。

 特別警報、避難勧告というこれまで経験したことのない対応を冷静に検証し、次に生かしてもらいたい。