「涙は女の武器」「男は女の涙に弱い」という俗説が頭の隅にあった新人のころ、悔し涙を流すのはトイレだった。今も、上司の前で泣くのはご法度と、心に誓う若い女性は多いのかもしれない

▼そんな時代に、同世代の野々村竜太郎兵庫県議(47)の号泣会見である。よもや、中年の公人男性がこのような姿を見せるとは思いも寄らず、あっけにとられた

▼昨年度の政務活動費から195回分の出張旅費を支出した問題の釈明会見でのこと。「世の中をぅおー、変えたくてぇー」と絶叫し、泣きじゃくった。説明責任はまだ果たしていない

▼号泣会見で思い出すのは17年前、100年企業だった山一証券の廃業を発表した野澤正平社長だ。「社員は悪くありませんから。悪いのはわれわれなんですから。再就職できるようお願いします」と深々と頭を下げた

▼欧米では両者とも批判されたが、違いは大きい。一方は市民の目に「ごまかすためのパフォーマンス」と自己保身に映り、他方は社長就任わずか100日でトップのプライドより社員の行く末を第一に案じた

▼兵庫県議会が「資質を疑わざるを得ない」と同僚に厳しい目を向けている。政務費の使途の透明化はもちろんだが、政治家の暴言、放言、失言が日常化しつつある今日、号泣会見が有権者に問い掛けた意味は案外大きい。(与那嶺一枝)