本当に市長室で「オトーリ」を回したのだろうか。一瞬耳を疑わざるを得ない事実が発覚した。宮古島市の下地敏彦市長が7日午後、台風8号の接近で宮古島地方に「特別警報」が出されている中、市役所の市長室で複数の職員と飲酒をしていた。

 「数十年に1度の強さ」の自然災害が見込まれる場合に発表されるのが「特別警報」だ。台風では全国初だった。

 危機管理の最高責任者として猛烈な台風の襲来に万全の態勢で備えるべき立場なのに、下地市長の行動には一片の危機意識も感じられない。

 市では暴風警報が発表された7日午後4時13分、副市長を本部長とする災害警戒本部を設置。同6時20分に暴風と波浪の特別警報が出されると、下地市長を本部長に職員80人態勢の災害対策本部に格上げした。

 市によると、下地市長は同日午後6時すぎから、8月に東京で開かれる観光イベントへの出展について担当職員から報告を受けた後、「激励と慰労を兼ねて飲酒した」(同市長)という。

 どうして特別警報が出されている中で激励と慰労と称して飲酒しなければならないのか。とても理解できない。

 飲酒は同7時半ごろ切り上げたという。下地市長は「あの時点では風は強くなかった。飲酒自体が主眼ではなく、許容範囲だと思っている」と述べたが、その後「酒の提供は控えるべきだった」とコメントを出した。何をか言わんやである。台風はその時点では、さらに発達することが予想されていたのだ。

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 宮古島市では2003年9月に直撃した台風14号が、最大瞬間風速74・1メートルを記録。死者1人、重傷者7人を出す大災害となった。

 過去には、最大瞬間風速64・8メートルを観測した1959年9月の宮古島台風(サラ)、66年9月に最大瞬間風速85・3メートルを記録した第2宮古島台風(コラ)がある。

 今回の台風8号は、その記憶を呼び起こした。市は7日午後10時には市全域の約2万5千世帯に避難勧告を出し、安全な場所への避難を呼び掛けた。結果的には宮古島市で観測された最大瞬間風速は36・5メートルで予測されていたほど強い風は吹かなかったが、あくまで結果論である。

 けが人が出たほか、サトウキビや野菜、マンゴーなど約2億6千万円の農作物被害が出た。この事実に照らせば、下地市長の行動は、住民の危機意識と乖離(かいり)していると言わざるを得ない。

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 宮古島市では台風8号の通過後もしけが続き、観光客の男性2人が遊泳中に溺れて死亡した。沖縄本島地方では大雨や強風により各地で住宅浸水や道路冠水、土砂崩れ、車の横転や倒木などの被害が相次いだ。県民にとって、今回の特別警報は、あらためて自然災害の脅威と、早めの備えや避難の大切さを認識させるものとなった。

 市長の最大の責務は市民の生命・身体・財産を守ることである。下地市長は自らの責任を明らかにするとともに、猛省し、市民に謝罪すべきである。