11月の知事選までに辺野古埋め立てに向け、既成事実を積み重ねておくことが安倍政権の狙いである。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設問題で、沖縄防衛局は辺野古埋め立てに先立つ海底ボーリング調査に関し、県に協議書を郵送した。日米両政府は常時立ち入り禁止水域を沿岸部50メートルから2キロまで恣意(しい)的に拡大、政府は今週にも同水域を明示するブイ(浮標)を設置、その後ボーリング調査に入る考えだ。

 安倍晋三首相は沖縄全戦没者追悼式で「沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら」と述べた。ボーリング調査の見通しで記者団に「しっかりと地元の方々、県民の皆さまに説明していきたい」と言明した。説明できるわけがあるまい。何の正当性もないからだ。

 私たちは仲井真弘多知事が「県外移設」を2期目の公約にして当選したことを忘れていない。名護市では新基地建設に断固反対する稲嶺進市長が再選されても、政府は埋め立て強行の姿勢を改めない。錦の御旗にしているのは、公約を裏切った仲井真知事の承認である。これで「法治国家」といえるのだろうか。

 安倍首相は4月のオバマ米大統領との会見で「移設を着実に進めていく。その決意を確認し合った」と移設強行の姿勢を隠さなかった。これに仲井真知事は「いったん始めたら、そのぐらいの決意で進めた方がいい」と言い放った。自らの承認によって不測の事態が起きる可能性を招いているのに、県民の生命、財産を守らなければならない知事の発言とは信じられない。

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 辺野古移設が「負担軽減」と強調する政府のまやかしがまた明らかになった。キャンプ・シュワブ内に兵員宿舎30棟以上など多数の軍関連施設を建てる計画が米政府の内部文書で分かった。海と陸で機能強化された最新の巨大な軍事基地が半永久的に居座る。どこが負担軽減なのか。

 米側は全体像を地元に示すよう求めたが、日本側は地元に説明していないという。変わらぬ隠蔽(いんぺい)体質である。

 環境影響評価(アセスメント)手続きで、埋め立て申請書の段階になって弾薬搭載エリアの面積を拡大し、船舶が接岸する埠頭(ふとう)が長くなった。米海兵隊の強襲揚陸艦接岸が可能となる規模である。

 オスプレイ配備は米側が早い段階から日本政府に伝えていたが、政府は手続きの最後の評価書になって初めて盛り込んだ。住民らは異議を唱えることができなかった。意図的な住民の意見封じである。

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 環境は沖縄の生命線だ。観光産業はもちろん、私たちは先祖伝来海の豊かな恵みを受け、海にまつわる伝統祭祀(さいし)を精神文化の支えにしてきた。

 仲井真県政下で沖縄の将来像を描いた「21世紀ビジョン」に生かすための県民アンケートで、守るべき沖縄の良さとして回答者の9割が「豊かな自然環境」を挙げた。昨年策定した「生物多様性おきなわ戦略」でも目指すべき将来像を「自然を大切にする真心(ちむぐくる)と、いきものとのゆいまーるを育む島々」を掲げている。

 知事は自ら策定した沖縄の将来像をも裏切っている。