米軍普天間飛行場の移設が計画されている名護市辺野古の埋め立て予定地内で、ジュゴンの食痕(しょくこん)が110本以上見つかった、と日本自然保護協会が発表した。

 草食性のジュゴンは海草をえさとしている。ジュゴンが海草を食べると、ジュゴン・トレンチと呼ばれる溝のような白っぽい跡が残る。今年の5月半ばから7月初めにかけてのわずか2カ月の調査で、110本以上も食痕が見つかったというから驚きだ。

 協会によると、2004年以前は同海域で恒常的にジュゴンの食痕が見られたが、05年から08年には見つからなかった。沿岸案に基づく環境調査やV字案に基づく事前調査、環境アセス調査が影響したのでは、と協会は推測する。

 こうした結果をもとに防衛省は、環境影響評価(アセスメント)の評価書で、ジュゴンがこの海域を利用する可能性は小さい、と予測していた。

 ところが、11年以降、大浦湾にジュゴンが現れるようになった。今年5月からあらためて調査したところ、「日数と人数が限られた調査では正確な数を把握できないほどの多くの食痕が残されている」ことが分かった。その範囲も広がっているという。

 沖縄のジュゴンは、近い将来、絶滅する恐れが極めて高い絶滅危惧種1A類に指定されている。県は、環境アセス後に確認されたこの新たな事実を重く受け止め、近く始まるブイ(浮標)設置作業やボーリング調査の中止を防衛省に求めるべきだ。

 ジュゴン保全のためには再調査が欠かせない。

    ■    ■

 これまでの防衛省の調査では、沖縄島周辺に3頭(個体A、B、C)のジュゴンが生息していることが確認されている。AとCは辺野古北部の嘉陽の海草藻場を恒常的に利用。このうちCは時折、辺野古・大浦湾に足を延ばすという。

 5月以降の調査では、食痕の数の急増、範囲の拡大にとどまらず、水深も「従来は浅瀬のみを利用すると考えられていたが、19・6メートルという深場にある海草藻場も利用している」ことが分かった。

 特に、埋め立て予定地の中が最も多く利用されている、と協会は指摘する。これまでの想定や推測に修正を迫るような発見だといわなければならない。

 7月中に海底ボーリング調査が始まると、生息環境がかく乱され、ジュゴンがこの海域に寄りつかなくなる恐れがある。協会の調査結果を検証するためにも、ボーリング調査を中止し、通常の環境の下で、時間をかけて再調査を実施する必要がある。

    ■    ■

 沖縄のジュゴンは、世界で最も北に生息していることから「北限のジュゴン」と呼ばれる。絶滅危惧種のジュゴンをあらゆる手を尽くして保全していくことは県の「生物多様性おきなわ戦略」を推進していくことにもつながる。

 仲井真弘多知事は最近、辺野古埋め立てを急ぐ政府を後押しするような発言が目立つ。自然保護協会の貴重な調査結果を政治的判断で無視するようなことがあれば、環境行政の責任者として失格だ。