これでは国民の知る権利は保障されない。最高裁の示した判決は、情報公開法の趣旨とかけはなれたものであり、とうてい納得できない。

 沖縄返還をめぐる日米間の密約に関し、元毎日新聞記者の西山太吉さん(82)らが関連文書の開示を国に求めた訴訟で、最高裁第2小法廷は一審の開示命令を取り消した二審東京高裁判決を支持し、原告側の上告を棄却した。

 一、二審では、いずれも密約の存在を認定。一審では国が不開示を決定した時点で文書を保有していたとして、国に対し文書の開示と原告1人当たり10万円の損害賠償を命じた。

 これに対し二審は「秘密裏に廃棄された可能性がある」とし、持ってないものは開示できないとの理屈で、不開示は妥当とし、一審の賠償命令も取り消した。

 最高裁は、二審の判断を維持した上で、判決理由で行政機関が保有していないことが理由となっている不開示決定の取り消し訴訟では、開示を請求する側がその存在を証明しない限り公にできない、との初判断を示した。

 一、二審では「開示請求する側が過去の文書作成を証明した場合は、行政側が廃棄を立証しない限り、文書は保管されていたと考えられる」としていた。最高裁の判断は、行政が文書を破棄することを容認したものである。

 都合の悪い情報を伏せる政府の不当性を追及し、責任の所在を明らかにするのが、筋ではないか。公開を求める市民の側に重い立証責任を課すことは本末転倒と言わざるを得ない。

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 西山さんらが開示を求めたのは、沖縄の施政権返還に当たって本来米国が支払うべき米軍用地の原状回復費400万ドルや海外向け短波放送「VOA」の施設移転費1600万ドルなどについて、日本側が肩代わりすることを示す文書などだ。

 そもそもこれらの密約文書は、琉球大学の我部政明教授が米国立公文書館で発見し存在が証明されている。加えて密約を認めた吉野文六元外務省アメリカ局長が法廷で証言もしている。

 一審では、これらの事実を基に国が1969~71年に文書を作成し保有していたと認定し「探したが見つからなかった」とする国側主張に対し、調査の不十分さを指摘。「国民の知る権利をないがしろにする対応は不誠実」とし、保有が失われた事実は認められないと結論づけていた。正論である。

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 一、二審ともに密約文書が「第一級の歴史的価値を有する極めて重要なもの」との認識を示している。公文書管理法は「公文書が健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」とうたっている。

 これに逆行するのが年内にも施行される特定秘密保護法である。「外交上、不利益を及ぼす恐れがある機密」などとされ、秘密指定されれば半永久的に公開されない可能性もある。

 最高裁が無責任きわまる理屈で、外交文書を闇に葬るつもりなら、歴史に対する冒涜(ぼうとく)である。