日本が攻撃もされていないのに他国の防衛のために集団的自衛権を行使することと、安倍晋三首相が強調する「受動的」「限定的」な範囲にとどめるというのは国際的には通用しない。歯止めとしている武力行使の新3要件もあいまいで、時の政権の裁量次第でいかようにでも解釈できる余地が残されている。

 米国が攻撃されたり、中東のペルシャ湾・ホルムズ海峡に機雷が敷設され、石油供給が絶たれたりするなどの経済的な要因も集団的自衛権を行使するケースに当たるという。「専守防衛」を逸脱するのは明白で、武力行使が際限なく広がる懸念が拭えない。早くも、歯止めがなきに等しいことが浮き彫りになった。

 衆参両院の予算委員会は14、15の両日、集団的自衛権に関する集中審議を行った。憲法解釈を変更した閣議決定から初めての国会論戦だ。

 日本に輸入される原油の8割が通過する中東のホルムズ海峡における機雷掃海について安倍首相は「石油の供給不足が生じて国民生活に死活的な影響が生じ、わが国の存立が脅かされる事態は生じ得る」と答弁した。経済的要因も集団的自衛権の行使に該当するとの認識を示したものだ。どれだけの経済的ダメージを受ければ集団的自衛権の行使に踏み切るか判然としない。

 機雷掃海について安倍首相は受動的、限定的と強調したが、集団的自衛権を行使し、「敵国」が敷設した機雷を除去することは受動的、限定的などではない。戦争における能動的な戦闘行為である。逆にいえば日本は敵国の攻撃の対象になるのである。

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 ホルムズ海峡での機雷掃海では、沿岸国の領海に入らざるを得ない。岸田文雄外相は「他国の領海内でも許容される」と明言した。「海外派兵はしない」と繰り返す安倍首相の見解との齟齬(そご)ではないか。

 日米同盟が大きな影響を受ける場合も武力行使の3要件に該当する可能性が高い、と安倍首相は答弁した。米国が主導する戦争に日本が巻き込まれる危険性が高まる。閣議決定の内容に地理的制約は明記されておらず、日本が米国の世界戦略に深く組み込まれることは間違いない。

 集中審議における安倍政権の前のめりの姿勢はそれだけではない。安倍首相は新3要件を満たせば、米艦防護など政府が提示しながら与党でも議論が尽くされていない8事例、当初は否定していた国連決議に基づき団結して武力制裁を科す集団安全保障への参加もできると踏み込んだ。もうすでに閣議決定を飛び越えたなし崩し的な拡大である。

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 安倍首相は集団的自衛権の行使に、どういうリスクが伴うかについては固く口をつぐむ。集中審議でも「自衛隊のリスクが高まるのを認めた上で、国民に説明すべきだ」と何度も迫られたが、真っ正面から答えることがなかった。

 集団的自衛権は他国の戦争に参戦することである。他国を守るために自衛隊員に戦死者が出る。自衛隊員が敵国の兵士を殺す。安倍首相は聞き心地の良い言葉だけを並べ、戦争のリアリティーを隠しているというほかない。