行政も政党もみんな総論には賛成しているはずなのに、事態が改善しないのはなぜだろうか。「子どもの貧困対策法」は1月に施行されており、もう言い訳は通用しない。具体的な改善策を打ち出し、実行に移すときだ。

 「子どもの貧困率」が2012年の時点で16・3%と過去最悪を更新したことが厚生労働省の国民生活基礎調査で分かった。

 前回、09年時点の調査から0・6ポイント悪化したことになる。「相対的貧困率」も過去最悪の16・1%だった。

 国民の年間の所得を順番に並べ、真ん中の人の所得(中央値)の半分に満たない人の割合を「相対的貧困率」と呼んでいる。その世帯に属する18歳未満の子どもの割合を示すのが「子どもの貧困率」である。

 厚生労働省によると、母子世帯は10年と比べ約11万世帯増えた。母子世帯で働いているお母さんの4割以上が非正規従業員だという。

 大人1人で子どもを育てている世帯の人の貧困率は54・6%に跳ね上がる。経済的な困窮は深刻だ。母子世帯で生活が「苦しい」と答えた人は80%を超えた。

 沖縄県は非正規労働者の割合も母子世帯の割合も高い。沖縄だけの数値はまだ公表されていないが、極めて厳しい環境に置かれているのは間違いないだろう。

 自己責任論を前面に押し出して親や家庭に過度な負担を負わせるのは、問題解決を遅らせ、事態を深刻化させるだけである。現金給付など生活苦を和らげる具体的な施策が必要だ。

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 「子どもの貧困対策法」は、国に対して、貧困対策の基本方針となる大綱の策定を義務づけ、都道府県に対しては計画づくりを求めている。

 近く閣議決定する大綱には、給付型奨学金の創設や幼児教育の無償化などが盛り込まれる見通しだ。

 英国のトニー・ブレア首相(当時)は1999年、子どもの貧困を2020年までに撲滅させる、と宣言した。貧困率改善に向け数値目標を設定することは、政府のやる気を示すバロメーターになるが、政府の大綱案には数値目標がなく、財源の裏づけも示されていない。

 景気が回復すれば賃金が上がり、子どもの貧困も解消されるという「トリクルダウン理論」を主張する人もいる。しかし、実際には、景気の動向にかかわらず、子どもの貧困率は上昇している。景気回復の恩恵が貧困層には届いていないのである。

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 教育機会の平等を維持すること。子どもの将来が生まれ育った環境に左右されないよう、社会全体で子どもの成長、発達を保障すること。それが活気ある社会を実現するための最も効果的な方法だということを、この際、あらためて確認したい。

 経済力のある親だけが「未来への投資」を行い、子どもの貧困対策を放置すれば、意欲格差が生まれ、意欲格差が学力格差を拡大させ、貧困の連鎖が続く。沖縄にとって子どもの貧困対策は切実で急を要する重要課題である。