朝の奥武山公園は6時の開門と同時ににぎわいをみせます。散歩を楽しむご夫婦、犬の散歩をする人々、小さい子供と一緒に運動を楽しむ皆さま、中には鉄アレイを持ってランニングをするつわものまでいます。さて私はというと、到底人様にはお見せできない苦悶(くもん)の表情を浮かべながら、毎日出勤前に5キロメートルのランニングを楽しんでいます。苦痛の30分の後の爽快感は格別で、体が軽くなり、仕事も私生活もとても充実している印象です。

 皆さまご存じの通り沖縄県は急激な生活習慣の変遷、欧米型生活に伴い、あるいは超クルマ社会が原因で日本一の肥満県となってしまいました。2012年度の沖縄県の女性の平均寿命は全国3位に陥落し、男性に至っては見る影もなく30位にまで後退してしまいました。このことは極めて由々しき事態であり、我々医療従事者のみならず県民ひとりひとりが意識を持って事態の改善に取り組むことが重要であると考えられます。

 さて乳がんの発症リスクと肥満の関係に着目してみましょう。我々は乳がんと肥満の関係について研究を続けてきましたが、当クリニックの研究データでは肥満が乳がんの発症に極めて重要な因子であることが分かってきております。閉経後のみならず閉経前でも肥満が乳がん発症のリスク因子になっている可能性が示唆され、沖縄の戦前戦後の歴史や平均寿命の推移と肥満と乳がん発症の相関を比較しますと、これらが密に関連している結果が得られました。

 加えて、我々の研究で昨今の沖縄県の乳がん発症のパターンが、日本型の発症パターンから生活習慣病と密接に関係した欧米型の発症パターンにシフトしてきたこともわかってきております。視点を変えると、食生活の改善や運動の推奨によって、予防できる乳がんが存在する可能性も考えられるのであります。

 昨年12月、本研究を米国で開催された「サンアントニオ乳癌(がん)シンポジウム」で発表したところ、世界中の研究者が沖縄県の現状と乳がんの発症リスクについて注目し、多くの皆さまに握手を求められたという経験をしました。沖縄県のみならず世界が生活習慣と乳がんの発症に注目していることがうかがえます。

 毎日お見かけする顔を横目に、私は、今日もまた人様にお見せできない苦悶の表情を浮かべて奥武山公園を疾走しています。そして今日もとても爽快です。多くの県民が健康で長生きできるよう、一緒に運動を始めませんか。(玉城研太朗・那覇西クリニック)