「の」の字を見て、まんじゅうを連想する県民が多いのは、それだけ親しまれているからだろう。もっちりとした生地に、ずっしりと重いあんこ。包みに使うサンニンの香りが風味を高める

▼「のーまんじゅう」で知られる、ぎぼまんじゅうの創業者、名嘉眞ハルさんが亡くなった。90歳。最近まで店に立つほど元気で、素朴な味わいの名物菓子を作り続けてきた

▼現在、店がある首里久場川で生まれた。少女時代は糸満に奉公に出され、商店を転々とするなど苦労したという。その経験が商売を始めるきっかけになったというから、バイタリティーあふれる女性である

▼作り方は母親がこしらえていたのを見て覚えたそうだ。終戦直後の物のない時代には、物々交換でメリケン粉を手に入れ、あんこに芋を混ぜるなど、工夫とやる気で難局を乗り切った

▼夫とは離別し、働きながら1女3男を育てた。長女で後を継ぐ祖慶米子さん(72)は「儀保に店があった10年前までは年中無休。お客さんが来て、休みだったら申し訳ないと。あんこの量も絶対減らすなと言われてきた」と思い起こす

▼朱色の「の」は、お祝いに欠かせない熨斗(のし)の「の」に由来している。何も書かない法事用もあるが、にぎやかなことが好きだったハルさんの仏前には、米子さんが作ったのーまんじゅうが供えられた。(森田美奈子)