〈朝に見て昼には呼びて夜は触れ確かめをらねば子は消ゆるもの〉。子を思う無限の親心を数々の歌に残した歌人、故・河野裕子さんの作品にある。どの作品も、いとしい子を、こよなく慈しむさまが伝わる

▼河野さんには信じられないだろう。神奈川で5歳の男児が育児放棄で白骨体で見つかり、県内でもパチンコ店の駐車場の車中で乳児が衰弱死した。幼い子どもが理不尽に命を落とす事件、事故が続く

▼共同通信の調査によると、2011年度からの3年間に、育児放棄などが理由で、自宅や路上に置き去りにされた子どもは395人に上るという。段ボールに入れられたまま、熱中症で、飢えで…。想像すると、誰しも心で「ひでぇ」と嘆息するだろう

▼同調査で県内の事例はなかったが、穏やかな気持ちにはなれない。以前、育児放棄の取材で、民生委員に見せてもらった、ごみ屋敷で生活する子どもの写真を思い出す

▼子捨ての背景に貧困問題もあるが、生活支援や、命の危機を未然に防ぐ仕組みは十分ではない。ただでさえ少なくなっているのに、今いる子も守れない。子ども受難の時代は終わらせられるか

▼夏休みは、子どもの安全に一層気を回す時だろう。心ふさがれる事件、事故はあるが、河野さんの作品に身を寄りかけ、子への思いを深める期間であってもいい。(宮城栄作)