血統書付きの犬といえば、容姿端麗で健康的というお墨付きだと思っていた。が、英国では犬種の特徴をより強く出してコンテストで成績を残すために近親交配を続け、先天的な内臓疾患などを抱える子犬を産ませていた

▼ドキュメンタリー番組で苦しむ犬の姿を目にしたとき、人間の業の深さにめまいがした。かわいがられるのが本領のペットへの仕業ではない

▼愛玩動物ではないけれど、これほど愛情が注がれる牛もまためったにいない。来月、人間なら80歳で現役を引退する肉用のスーパー種牛「北福波」のことである

▼昨年には、産地である宮古島市の家畜市場で、関係者が北福波の等身大パネルを作り、除幕式を開いた。顕彰が目的というから、並々ならぬ感謝の対象となっている

▼それもそのはず。昨年度までの10年間で、人工授精して生まれた子牛は3万2千頭に及び、117億円以上の経済効果を生んだ。全国的に肉質への評価が高く、高騰している子牛の取引価格にも貢献したはずだ

▼血統を受け継ぐ「福福波」にバトンを渡し、肩の荷を下ろしたことだろう。県の担当者は「ゆっくりと余生を過ごさせる」と偉業をねぎらい、情け深い。めったに口にできない霜降りをたくさん産出した種牛の肉はどんなサシなのだろうかと、一瞬のどを鳴らしたわが身の業を恥じた。(与那嶺一枝)