安倍政権の下、日本の「平和国家」の看板は、かつてないほど揺らいでいる。

 安倍内閣は7月、国家安全保障会議(NSC)の関係閣僚会合を開き、米国への地対空ミサイル「PAC2」の部品輸出を許可した。武器輸出を原則禁じる「武器輸出三原則」に代わり、今年4月に閣議決定した「防衛装備移転三原則」に基づく初の事例だ。

 輸出する部品は、迎撃のために発射したミサイルの動きを安定させる装置。設計や製造技術の使用許可(ライセンス)を得て、自衛隊向けに製造していた日本企業に、ライセンス元の米企業から輸出の打診を受けた。従来は武器輸出三原則に基づき、拒んできた事案だ。しかし、歯止めとなってきた三原則の撤廃によって、輸出が解禁された。

 米企業は今回、中東カタールへの第三国移転を想定しているとされる。ただ、輸出後の管理はライセンス元の米企業に委ねられるため、日本政府は関知しない立場という。

 防衛装備移転三原則の運用指針によると、「部品等をライセンス元に納入する」場合は、目的外使用や第三国移転をする際の日本の事前同意は不要としている。

 今後も同様の輸出を米国から求められた場合、第三国移転により、パレスチナとの紛争が続くイスラエルに輸出される可能性も否定できない。

 日本の製品が紛争国で使われれば、日本は紛争に加担することになる。国際紛争にかかわる自覚は、大半の国民にはないだろう。そうした中、新三原則は、さまざまな分野に波及している。

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 防衛装備移転三原則は、日本と安全保障面で関係のある国との防衛装備品の共同研究や開発を条件付きで認めている。これを受け政府は7月、英国との間で戦闘機に搭載するミサイル技術の共同研究を決めた。仏や豪州とも防衛装備品の共同開発などを進める方針を打ち出している。

 さらに政府は、米軍をはじめとする他国軍への自衛隊の後方支援をめぐり、従来禁じてきた武器・弾薬の提供を可能とする法整備の検討に入った。これも、武器禁輸政策の転換によるものだ。

 6月にフランスで開催された世界最大規模の兵器の国際展示会には、国内の防衛産業各社が初めて参加した。これまでは武器輸出三原則の下、出展したとしてもその後の輸出に制約がかかるため、防衛産業側が参加を見合わせていた。日本企業の参加は政府主導で行われ、武田良太防衛副大臣が視察に訪れた。

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 政府は新原則の下、テロや災害対策に活用できる装備品の輸出先開拓により成長戦略につなげるとともに、安全保障分野で各国と連携を強め、中国に対抗する狙いもある。

 安倍晋三首相の掲げる「積極的平和主義」は、「経済戦略」と「対中国戦略」の名目の下、「平和国家」の理念を後退させているのが現実だ。

 集団的自衛権の行使容認と並び、安倍政権による防衛装備の輸出積極策は、国際紛争への関与を避けてきた従来の平和政策との整合性を著しく欠く。政治主導と「政治の横暴」を混同すべきではない。