フクギの防風林に囲まれてたたずむ集落。点在する小規模な畑や屋敷囲いの中の「アタイ」と呼ばれる家庭菜園。思い描くだけで心が癒やされるような懐かしい風景だ。

 伊平屋、伊是名、多良間の3村が国連食糧農業機関(FAO)の「世界農業遺産」の登録を目指し、農林水産省に国内候補地の立候補を申請した。

 3村の申請は「抱護の林帯に守られた沖縄の伝統的小規模農業システム」。防風林に守られた集落や畑、自給自足の伝統的農業と災害時の食糧難を支えてきた家庭菜園を共通の特徴に挙げ、沖縄の農村の原風景として、後世に残す貴重な遺産とアピールしている。

 農水省は7月31日、3村を含む国内7地域の申請を受け付けたと明らかにした。専門家会議による審査を経て、10月に国内候補地を決定。2015年開催のFAO国際会議で認定の可否が審査される予定だ。

 登録されれば、国際的認知度が上がり観光客誘致や農産物のブランド化などが期待できる。なによりも国際機関の評価が、足元の暮らしに対する住民の自信につながり、島おこしの取り組みに一層の弾みがつくはずだ。

 県内の離島農業は、担い手不足などさまざまな課題を抱えている。一方で個性的で多様な特産品などは、根強い人気がある。毎年開催されている「離島フェア」の盛況ぶりがそれを証明している。住民の島への愛着と情熱が、候補地選定への評価を後押しすることになるだろう。

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 世界農業遺産は、02年に創設されたFAOのプロジェクト。その土地の環境を生かした伝統的な農業や景観、生物多様性を守る土地利用などを「地域システム」として一体的に維持、保全し、次世代に継承することが目的だ。

 これまでにインドのカシミール地方でのサフラン栽培や南米ペルーのアンデス地方の農業など、13カ国・31地域が登録されている。国内では国の特別天然記念物トキと共生する農法を行っている新潟県佐渡地域をはじめ、棚田の景観や伝統的な製塩で知られる石川県能登半島など5カ所が登録されている。

 世界農業遺産創設の背景にあるのは、近代農業の行き過ぎた生産性への偏重だ。それが森林破壊など環境問題を引き起こしていることへの警鐘である。この視点は生産効率とは対極にあるが、観光との組み合わせなどで新たな農業振興のヒントにもなろう。

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 都市への人口流出による離島や過疎地の現状は厳しい。本紙が復帰直前の1970年と2013年の人口を比較したところ、沖縄本島で58%増加した一方で、宮古と石垣を除く小規模離島では34%減少した。

 近年、その土地の生態系と共生する「里山」の生産システムが注目されている。重視されるのは持続可能な生物資源の保全と利用だ。厳しい自然と折り合いを付けながら営々と築かれてきた離島の暮らし。国際的評価が得られれば、大きな展望が開けるきっかけになるに違いない。