ゲイのカップルが育児放棄されたダウン症の少年を育て「家族」になる。1970年代の米国の実話に基づいた映画「チョコレートドーナツ」が那覇市の桜坂劇場で9月末まで公開中だ

▼5月から続くロングラン上映。番組編成を担当する下地久美子さんは「口コミでじわじわと広がり、想像以上のヒットとなった。観客の年齢層も幅広い」と喜ぶ。「人生の一本に出会えた」との感想もあったという

▼少年を好演するダウン症の俳優アイザック・レイヴァの笑顔が心に残る。主演俳優アラン・カミングが歌う数々の名曲も素晴らしい。「いつの日か解放される」とボブ・ディランの曲を熱唱する場面は胸をかきむしられる

▼物語の終盤、少年の養育権をめぐる裁判に敗れた主人公が裁判官に向かって叫ぶ。「一人の人生の話だぞ。あんたらが気にも留めない人生だ」。真っすぐな言葉が見る者の心に突き刺さる

▼レズビアンやゲイなどの性的少数者が生きやすい社会を求めて7月に開かれたイベント「ピンクドット沖縄」には多くの人が集まった。差別や偏見はなくなっていないが、生きにくさを変えようと行動する人は確実に増えている

▼映画のヒットは多様な生き方への共感者の多さを示している。「気にも留められない」人生を必死に生きる一人一人が未来をつくっていく。(田嶋正雄)